なぜ〝数量〟が重要か

数量は市場にとって超重要

 先日、ある方から「卸売会社は利益構造が脆弱すぎる。取扱高や数量の追究でなく、利益重視の商売にシフトすべきである」との指摘を頂いた。確かに、卸の利益は非常に薄く、逆ザヤの取り引きも少なくない。利益改善は大きな課題であるのは確かだ。だが私は「ご指摘はごもっともだが、卸売市場にとって、数量確保は卸売会社の根本的な存在意義に関わっており、数量拡大路線を放棄することはできない」と反論した。その理由は何か。「市場流通ビジョンを考える会」の藤島廣二先生のビジョンレター№33に書かれてある事を要約して記録する。

卸売市場の存在意義

 企業は自らの社会的存在意義を明確にすることが重要だ。卸売市場の存在意義は「人々の生活に欠かすことができない生鮮品を、人々が納得するような豊富な品揃えで、また誰もが購入できるよう可能な限り低コストで、継続して供給する」ことである。これを実現するためには集荷力が重要な役割を果たす。

地域必要量と集荷量

 一般に中央卸売市場の場合、商圏が地元の地方自治体の地理的範囲を超えていることから、それぞれの集荷量は地元の必要供給量(全国の卸売市場が供給する一人当たりの供給量に、その地の人口を掛け合わせた数字)の120~160%程度となる。

集荷量とコストの関係

 集荷量が弱い市場は数量不足となるが、卸売単価は上昇しない。仲卸業者は直荷引で必要量を補うし、小売業者は調達先を安い市場に替えることもできる。よって単価は上がらないが、仲卸・小売のコストは増大する。主に輸送コストが増すからである。コスト増大は、末端価格を高くすることにつながる。

数は力なり

 卸売会社にとっての集荷量の減少は、極めて短期的には使用料などコスト削減、従業員減少による人件費削減につながり収益率が上昇するように見える。しかし、長期的には顧客が減少し、経営に致命的な影響を与える。また、末端価格の上昇は、「可能な限りの低コスト」という卸売市場の社会的存在意義の反故につながる。すなわち、社会的存続が危ぶまれる状態になるのである。よって、卸売市場は、常に集荷力アップを念頭に日々の営業活動を行うことを求められるのだ。