老舗和菓子店に何があったか

最初のお断り

 以下は確かな情報ではない。私どもの全くの思い違いかもしれない。むしろ間違いであってほしい。もし勘違いならお詫びし訂正しなければならないが、一応身内が見て聞いてきたことだ。

老舗和菓子屋のある日

 先日、妻が金沢の老舗和菓子屋「K(仮称)」さんにお菓子を買いに行った。Kさんは本店のほかに支店も何店か出されており、妻がその時行ったのは支店だ。偏食の私の父も、Kさんの和菓子なら食べる。そう頻繁にというわけでもないが、妻は時々はこうして買いに行く。

定番がない!

 そして妻は驚いた。いつも並んでいた定番のお菓子がない。えんどう餅や酒まんじゅう、米まんじゅう…季節に応じて限定で作られることもあるだろうが、妻曰く「あれもこれもなくて、見たことがないお菓子ばかり並んでいた」そうだ。

商品構成の路線変更?

 お店の人に聞くと、商品構成が最近大きく変わったそうだ。定番品は、まったく作らなくなったわけでもないらしいが、生産ラインが追いつかず、品切れが多くなっているとのこと。でもあのお馴染みのが欲しくて買いに来たんですけど、と妻が言うと、そうおっしゃるお客様がたくさんいます、と店員さんが申し訳なさそうに応えたとのことだ。本店に行けばありますか?とも妻は聞いたが、本店も品揃えは同じです、との応えだった。

急激・劇的な変化は危険

 商品構成を変えることは企業にとっては必要なことだ。しかし〝変わらないあれ〟が欲しいというニーズが根強く残るからこそ老舗だ。昔ながらの定番品はかならず常備しつつ、少しだけ変化を取り入れるのが伝統あるお店のあるべき姿だろう。もしもKさんが劇的に商品構成を変えてしまったとすれば、今までの古いお客さんが離れてしまうことになりかねない。

我が身を振り返る

 バランス感覚は重要だ。進取の気性が激しいリーダーは、時として度が過ぎる。変革を好むがゆえに、変えるべきでないものまで変え、本来の強みを自ら手放してしまう。歴史上、こうした事例は枚挙にいとまがない。我が社は旧態依然とした点が多く、変革すべきところだらけのように思えるが、それでも残すべき〝旧態〟もある程度あるのだろう。そこを見定めた上で、適正なペース、適度なバランス感覚でかじ取りをする必要があると思う。

最後にお断り

 繰り返すが、このK店の品揃えはたまたまこの日だけのことで、今日行けばお馴染みのお菓子がまた当たり前のように並んでいるかもしれない。うちの父はもう新しいものは決して口にしない。1ミリも変革してほしくないものもこの世には数多くあるのである。