本の要約:アドラーの嫌われる勇気と幸せになる勇気

岸見一郎、古賀史健 共著

【1 嫌われる勇気】

人の行動は原因論ではなく目的論

 人は、過去の原因によって行動するのではない。今の目的によって行動するのである。原因を気にするのではなく、目的に気持ちを向けるべきだ。

人の全ての悩みは対人関係にある

 人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。人は、人との関係性によって、行動や感情が変化する。金銭的なことや幸福の悩みも、社会の中にいるからこそ生じる悩みだ。

自分と他者の課題を分離する

 対人関係のトラブルに遭った時は「誰の課題か」を考える。その選択によってもたらされる結末は、最終的に誰が引き受けるのかを考え、課題を分離する。

人間関係のゴールは共同体感覚

 「課題の分離」を対人関係のスタートとし、「共同体感覚」をゴールとする。他者を仲間だと見なし、そこに自分の居場所があると感じられることを目指す。共同体の中で他者貢献している感覚を持つことで、自分は価値があると思うことができる。

人生の意味

 一般的な人生に意味はない。「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ」。過去も未来も関係なく、今をどう生きるか。どんな意味を持って生きるかは、自分で決めることができる。あとは一歩を踏み出す勇気を持っているかどうかだ。

【2 幸せになる勇気】

尊敬とはありのままにそのひとを見ること

 教育の目標は、無力で不自由なところからの「自立」である。自立の入り口は「尊敬」である。子供に対しても尊敬の念を持て。すべての人間とは横の関係だ。尊敬は、人をありのままに見ることである。具体的には「他者の関心事に関心を寄せる」「他者の目で見て、他者の耳で聞き、他者の心で感じる」。相手と同じ立場に立って課題に直面することで、子どもは自分をひとりの人間として向き合ってくれていると感じる。

賞罰はしない

 人には叱ってもほめてもいけない。
第一段階「称賛の欲求」…称賛を得たいがために努力する。
第二段階「注目喚起」…先生をからかうことなどで周りの注目を集める。叱ってはいけない。人は特別である必要はない、ありのままで価値がある、ということを教える。褒めてもいけない。上下関係が生まれ、競争に繋がるからだ。「依存」関係はダメ。

競争原理ではなく協力原理

 褒めると競争原理が働く。仕事は分業することで所属感、他者貢献の達成感を得る。協力原理では、他者を信じなければならない。そのために他者を尊敬する必要がある。

与えよ、さらば与えられん

 相手を条件付きで信じる「信用」ではなく、無条件に信じる「信頼」で信じよ。自分を信じてほしければ、先に自分から信じろ。与えてもらうのではなく、自ら与えよ。

愛することを恐れてはならない

他者を信じる行為は、受動的なものではなく能動的な働きかけだ。「愛」とは、わたしでもなくあなたでもない。「わたしたち」の幸せを築きあげようとする決意だ。自立とは「自己中心性からの脱却」である。愛することに向き合い、人生の主語を「わたし」から「わたしたち」へ変えよう。それを成し遂げた時、本当の幸せを手に入れることができる。
それは簡単なことではない。日々の試練に打ち勝つには、愛することを恐れないことが必要であり、それがすなわち「幸せになる勇気」を持つことである。