野菜の高値市況は一変
野菜が高いぞ、少ないぞと、ワーワー騒いでいたのはつい先ごろのことだ。しかし季節外れの高温と好天により、野菜はおおむね潤沢に出回り、むしろ今は売れなやむ品目の方が多くなった。この状態を青果業界では〝ナヤミ〟という。ナヤミでは青果物の相場は安くなっていく。反対に引き合いが強く、品薄傾向となり、相場が上がっていく状況を〝モガキ〟という。
ナヤミの時こそ連絡を密にする
ナヤミの時、卸売会社の担当社員は、えてして産地との交信を渋る傾向がある。値段が安いので、産地から叱られ、咎められるのだ。気持ちはわかる。しかし、ナヤミの時こそ産地とのコミュニケーションを密にするのが優秀な営業マンだ。もちろん怒られたり嫌味を言われたりする。しかしそれに耐え、壁を乗り越えてこそ産地との信頼関係が強化される。
モガキに荷物をもらうには
ナヤミはいつかモガキに変わる。ナヤミの際に連絡を怠っており、いざ、モガキに転じてから産地に電話をして「荷物を下さい」と頼んだところで後の祭りだ。苦しい時に逃げて連絡をしてこなくなった市場に、産地が荷物を出してくれるはずがない。ナヤミとの時は市場も苦しいが産地も苦しい。モガキの時は、苦しい時に頑張ってくれた人に優先的に出してやろうとなるのが自然な人情というものだ。
人の世の常
これは別に青果物の市場流通に限った話ではない。本当のパートナーシップは売り手・買い手の垣根を超えて、苦しい時にともに歩んだと感じられる相手との間に芽生えるのだ。人間関係とはそういうものだ。そういう意味でも、この業界でものをいうのは何よりも〝人〟なのである。