青果卸の労務問題で悩ましきは

青果卸の労務問題

 青果卸売業の朝は早い。そしてかなり遅い時間まで仕事があったりする。一方で、今や長時間を一人の担当者が働き続けるのは許されない時代だ。労務問題をどうしていくかはこの業界でも大きな課題である。

品目担当制の問題点

 品目担当制(例えばA君はキャベツを担当しているなど)、産地担当制(例えばB君は愛知県産農産物を担当しているなど)、集荷・販売分離担当制(例えばキャベツの集荷面はA君が担当し、顧客への販売面はB君が担当するなど)等々、何十年にも渡って卸売市場は様々な試みをしてきた。だが、人の出入りが激しく、慢性的な人手不足に悩みながら、仕組み的には一番シンプルである品目担当制にわが社は落ち着いている。

早朝と夕方に重要な仕事あり

 ある品目を集荷し販売する一連の流れを一人の担当がこなす場合、早朝の現場(当市場の場合は朝6時~7時)に担当社員がいるのは普通に考えれば当然だ。例えば朝6時から仕事を始め、午後3時に業務が終了すれば、休憩1時間を与えての8時間労働となり、労務環境上、何も問題ない。ところが、担当を抱える社員の多くは、夕方の4時~6時に結構仕事をする必要にかられるのが現状である。

出荷明細の時間が遅い!

 その理由は、農協が出荷してくれる翌日販売分の明細(数量、サイズの比率など=この内容を〝玉流れ〟という)が夕方にならないと決まらないことにある。明細はどうでもいい、翌朝にせり販売で売ればいいだけだ…というのははるか昔の話だ。今や、スピード重視であり、明細が出た時点で、仲卸業者(=一次的な買い受け手)と連絡を取り、相対販売で売りを確定しなければならない。これを業界用語で物流も含めての〝分荷〟と呼ぶ。

担当者でなければできない部分

 この早朝の現場仕事と夕方の分荷仕事は、どうしても販売担当者でなければできない、と、どの社員も口をそろえて言う。相対販売においては、部下や作業員では判断できないことが多々あるからだ。すると、上の例の場合は、6時から18時まで担当者は何やかやと働くはめになり、8時間労働の枠はもろくも崩れ去る。長時間拘束だ。

中抜き制

 今までは、勤勉な社員の奉仕精神におんぶにだっこだったが、(繰り返すが)現代はそれでは許されない時代になった。何か策を打たなければならない。一つの改善策は〝中抜き〟という手法だ。社員は例えば午前中、仕事に一旦けりをつけ、帰ってよい。そして夕方に再び出社する形だ。しかし、職場のすぐ近くに住まいのある社員なら良いが、遠方から通ってくる社員にとってはこれも負担が大きい。

在宅ワーク

 別の手法として推奨しているのは、在宅ワークを当たり前にすることだ。例えば、夕方の分荷作業は事務作業的であるから、やはり前半は早めに仕事にけりをつけて帰宅してもらう。夕方の仕事は家でこなしてもらい、単純な労働である荷降ろしだけは、当直の別社員に指示して引き継いでもらう。在宅でも業務は業務なので、在社時の労働時間と自宅での仕事時間の合計時間が8時間で収まってくれることが理想だ。

試行錯誤

 机上の論ではいろいろ案は出るも、この業界はなかなかすんなり移行ができない。だが、経営陣も社員も知恵を絞って、労務環境を改善していかねばならない。