志賀町特産「ころ柿」の初荷
石川県能登地方、JA志賀町の特産干し柿「ころ柿」の初売りを迎えた。ブランド化で年々人気が高まり、昨年(12月1日)は1箱25万円!の驚き価格が出た品だ。今年はいかに…?と普通ならご祝儀相場について注目が集まるところだが、今年は全く趣の違う結果となった。
今季は大不作
実は今年、ころ柿は大不作が確定的となっている。予想では平年の7割減!である。-70%は異常値だ。3分の1もないことになる。最大の原因は春先の霜だ。花芽がつく4月に3日間ほど霜がついた。このため、ころ柿の品種「最勝(さいしょう)」の樹には実がほとんどつかなかった。さらに追い打ちをかけたのが炭疽病(たんそびょう)だ。実に黒い斑点が出て、そこから腐ってくる。菌のしわざなので、周りに伝染する。
ご祝儀相場は出ず!
つまり、今年の状況はかなり以前からわかっていた。JAおよび市場では、数が少ないことを見越して、今季はハーフ箱(大きさがレギュラーの品の半分の大きさの箱)をメインにすることを決定し、この日の初売りもほぼ全量ハーフ箱での出荷となった。注目の初せりだったが、桐箱に納められたころ柿ハーフ箱は、1箱3000円だった。この日、新聞・テレビの取材班が多数来ていた。多分彼らはがっかりしたことだろう。昨年が25万円(ただし最後にせりで販売した1箱だけだが…)、今年は3000円である。話題性がない、と思ったに違いない。
むしろ前向きな相場
しかし、新谷(あらや)組合長以下JA志賀町の皆さんと、我々市場人はそうではなかった。むしろほっと胸をなでおろしたのである。ハーフ1箱3000円はとてもいい値段だった。昨年より1個あたりの単価が100円も高い価格!つまり、買人側は数が極小なのを考慮して、それに見合った高単価に納得してくれたということだ。
生産者に向けた配慮
ご祝儀相場「○万円」は一種の景気づけである。実際の購買意欲とはかけ離れた非現実的な値だ。今年はそれがなかった。これはムードの沈滞を意味するのではない。〝配慮〟とでも言うべきものだ。なぜ配慮か。前述のとおり、今年は7割減の凶作である。7割減は、多数いる生産者のあくまで平均値だ。中には全滅した人もたくさんいるのである。そんな中「初せりン十万円だ~!」と煽るのはいかがなものだろう。傷心の方々の心情にあまりに無神経なバカ騒ぎになるだけだろう。
苦しい中でも最善の努力を
今年のころ柿は少ない。そして1個単価はとても高い。消費者にとっても手が出づらい。だからWIN-WINの反対のLOSE-LOSEだ。如何ともし難い。しかし、それならそれで最善を尽くすべきなのだ。今年は粛々と進められたはつせりだが、今度は年内いっぱい、この値段をなるべくキープする販売活動が求められる。出荷者も頑張るだろうし、我々もそれに応えるべく頑張らねばならない。