バチェラー4:レビュー

コロナ禍で作られた「バチェラー」最新作

 「バチェロレッテ」で最後の2名に残った黄皓(こうこう)氏(以下、コーコー)がバチェラーとなったシリーズ4作目である。女性陣は当日まで誰がバチェラーかを知らされずに集まるという趣向。どんな男が来るかわからないのに1,700人もの女性が応募したという。コロナ禍にも関わらず、みんなおおらかで結構な限りだ。

匂わせ事件

 コーコーはバチェロレッテで選ばれる側を経験し、恋愛リアリティショーの真髄を誰よりも理解している人物だ。どんな展開を織り交ぜれば番組が盛り上がるか、周到に思い巡らして臨んだことだろう。面白くなりそうとの期待を集めたが、配信直前にSNSで炎上騒ぎが起きた。いわゆる「匂わせ事件」である。参加女性の中で下馬評が高かった「藤原さん(愛称のんちゃん)」のインスタと、コーコーのインスタとが同じ展示会の模様を伝えた。視聴者は二人が一緒に行っていたに違いないと勘ぐり、バチェラーの結末のネタバレではないか、興ざめだと騒いだ。

匂わせそのものがフェイクだったのか

 配信が始まり、果たしてのんちゃんは勝ち残り続けた。先入観も手伝ってか、他の女性より圧倒的に魅力的に見えた。〝どうせ彼女でしょ〟と視聴者は半ば冷めて眺めていた。だが終盤で覆った。残り3人でのんちゃんは落ちたのである。〝匂わせ〟は視聴者の単なる勘違いだったのか、もしくは、コーコーまたは番組サイドが意図的に仕組んだフェイクだったのか。いずれにせよこれを機に番組に対する世間の評価は肯定的に変わった。

キスとお泊り

 配信中も騒がしかった。いわゆる「チューとお泊り事件」である。これまでのシリーズでは口と口のキスは最後に残った一人としかなかったのに、コーコーは複数の女性とチューをしまくった。一人の女性とは夜を明かした。コーコーめ、やりすぎだと非難された。しかし、これはコーコーの暴走というわけではない。番組中に二名の〝追加参加者〟があったことも含め、本場アメリカ版のマネをしたに過ぎない。アメリカ版はキスもお泊りも当たり前になっている。ただ、やはり日本人にキスやお泊りは馴染まない。アメリカ肉食人種だから、まぁ好きにせえや、で済むが、繊細な日本人の感性では、ここまで行くと即物的すぎて味消しとなる。今後のバチェラーにはぜひ自制してもらいたい。

バチェラーの王道

 以上、お騒がせはいろいろあったが、最終的にコーコーは見事に番組を仕上げた。バチェラーの王道を行く大団円。シーズン3やバチェロレットで未成熟な主役がルール無視のアナーキー番組にしてしまったが、素晴らしい原点回帰である。これはひとえにコーコーの分別の賜物である。以前のシリーズで書いた通り、番組「バチェラー」は、半タレント達によるアドリブの恋愛エチュードである。頭の半分は作品をどう仕上げるかに使うべきで、コーコーは大変良い仕事をしたことになる。

次回への改善要望

 不満もある。参加女性同士、仲が良すぎだ。諍いがない。アメリカ版のように人格を否定する罵り合いまでは期待しないが、妬み、嫉み、嫌悪など悪意がいろいろあって当然。それがほとんどなく、ドラマに厚みがなかった。今後の参加者にはぜひ改善をお願いしたい。