年内最後の穴水農場訪問
会社の100%子会社である「ファーム菜四季」に行った。今晩から大寒波で雪が積もるだろうから、恐らくは年内最後の訪問となる。従業員にミカンを一箱ずつ差し入れて一年間ご苦労をねぎらった。
農場長の怒り
農場長と話す。今季の冬場の出荷は白菜、大根、キャベツ等だったが、やっていて張り合いがなかったという。あまりにも相場が低調であり、販売価格が原価割れすることが多かったからだ。販売は我が社の営業の仕事である。農場長曰く、あと10円でも20円でもいい、作る我々の気持ちをもう少し考えてもらって、少しでも高い単価で販売してほしい、作れば作るほど赤字という状況ではあまりにもむなしい。
農業者の矜持
これが農業従事者の素直な心情だ。わが社のファームの従業員は、決まった給与で働いており、その月の売上には左右されない点で生活は保障されている。品質の良い野菜を計画通り出荷するのが彼らの責務であり、売上や利益はあくまで本社営業の責任である。しかし、とてもとても安い単価で売られたとわかるや、作り手のモチベーションはガタ落ちになる。作る者のプライドに関わる問題なのだ。
生産者のための卸売会社
これが委託販売で出荷する一般の農家、農業法人だったらなおさらである。この年だけの低迷ならば我慢もできる。しかし大根や白菜などの重量野菜は、近年は連続しての安値に見舞われている。低調な相場が毎年ならば、農業の担い手はいっかな増えず、どんどん減っていくことになる。日本の農業が衰退しているのは、端的に言えばこういうことだ。
高く売りたいのはやまやまだが…
卸売会社も高く売りたい点では農業従事者と利害は一致する。委託販売の場合は手数料が収益となり、販売単価×定率なので単価高の方が収益が上がるのだ。だが、常に需要と供給のバランスが変化して相場は乱高下し、低調な時は全国的な大暴落の波にさらされる。事前に単価も数量も決めた契約的栽培ならば相場の乱高下に左右されないが、その枠にはめられるのは全体計画のほんの数パーセントだ。
持続可能な農業にするために
農業の経営不採算の根本的な解決には、法律や行政の援助を含めて抜本的な構造改革が必要だと思う。単純な市場経済にぶち込んでは、日本の農業はもたない。だがそれは慧眼を持つ政治家と優秀な官僚との主導が必要で大きな問題だ。我々民間の卸売会社は、地道ながらも、生産と実需を最初から想定した生産委託と販売のサイクルを繰り返し、その輪を少しずつ広げていくしかない。作り手の納得した単価で販売しきることが、農業従事者のモチベーションを保つ重要な要素なのである。