白内障手術は仁術なり

同級生の西村彰医師

 2月10日のブログのとおり、先日行った白内障手術は、中学高校時代の同級生である西村彰君にやってもらった(同級生だから君付けで呼ばせてもらう)。西村君は金大附属病院で准教授になり、白内障、緑内障、網膜剥離などの治療で第一人者となった。当時は県外からも患者がおしかけ、順番待ちでなかなか診てもらえないと評判だった。その後独立し、2013年に金沢市の高尾台で「西村眼科」を開業し現在に至る。

即断即決のオペ

 私はここ1~2年で急速に視力が低下したので、前もってメールで連絡してから西村眼科を訪問した。

彼「そろそろ手術を考えてもいいね」
私「やはりそうか。ではお願いします」
彼「…(※)…。ちなみに今日でもいいけど」
私「あ、なら今日やっちゃいたい」
彼「じゃ、やるか」

 こんな調子で、手術は即決となり、局部麻酔から実質20分程度で終了した。痛みなし、入院なし。この日だけ眼帯をしたが、翌朝起きてはずしてみると充血も腫れもなく、視界が見違えるほどクリアーになっていた。あとは毎日3種類の目薬を差すだけで完治する。なんともスピーディーに事が運び、眼のトラブルは解決した。

手術の日を知らせるな

 西村君の適切で素早い治療はさすがだった。しかしそれだけではない。彼を昔から知っている(つもりだった)私だが、今回初めてわかったことがある。それが上記会話の※の部分だ。彼はこんなことを言ったのだ。

〝手術する日はいつでもいいよ。受付で予約してくれ。ただしその日がいつなのか、僕に教えないでくれ。知ってしまうと前日の寝つきが悪くなるかもしれない。或いは夜中に目が覚めてそのまま眠れなくなるかもしれない。自分の友人や親戚だと過剰に意識するからね。寝不足は手術に支障が出る。だから手術は当日まで知らない方がいいんだ〟

繊細さと誠実さ

 彼がそのような細かい神経の持ち主だったとはつゆ知らず、いささか驚いた。これまで白内障20000件、網膜硝子体5000件、緑内障150件もの手術をこなした辣腕医師である。鼻歌混じりでチョチョイとオペをこなすイメージがあった。だが違った。自分の体調整備、メンタル管理に慎重に臨んでいる。驚くと同時に彼の誠実さとやさしさ、仕事への真剣味に少なからず感動した。私は彼のように繊細にはなれないかもしれない。が、物事への向き合い方として、見習うべきことは多々あると感じた。

医は仁術なり

 手術直後、西村君は「終わったよ。無事に済みました」と私に声をかけてくれ、続いて「あー、宿題が一つ終わったな」と言って、フーッと大きくため息をついた。繰り返すが何万回もオペをこなしてきた一流の医師だ。その彼が緊張していたことが察せられた。なんと有り難いため息だろう。後日、術後良好ですと私が言うと「よかった、よかった」と医者らしからぬもの言いをした。古くさい表現だが〝医は仁術なり〟という言葉が浮かぶ。彼が眼科医として評判なのは、腕の良さもさることながら、この人柄が一番の理由かもしれない。