アルコールチェック義務化に思う

道路交通法改正

 今度の4月1日から道路交通法が改正され、5台以上の車両を使用する事業所の運転者に対して、酒気帯びの有無を確認するアルコールチェックが義務化される。10月からはさらにアルコール検知器を使用しての酒気帯び確認も義務化となる。これはフォークリフトも含まれるということで、当社も対象企業となる。具体的には出社時と退社時の2回、運転者に酒気帯びがないかどうかを安全運転管理者が確認して記録を残しておかなければならない。

アルコールチェックの実施方法

 当社では毎日何十人もがフォークリフトを操作するので、一人の安全運転管理者が全員をチェックするのは難しい。そこで各部の部長を補佐役に任命し、自分の部署の所属社員全員を毎日チェック、コンピューターのグループウエアを使って運転管理者に報告する方式を考えている。法律だから、義務を粛々と履行せざるを得ない。

また管理職の負担が増える

 だが、また部長にこまごました業務負荷を与えることになるので心苦しい。部下が酒気帯びかどうかなど、朝、顔を合わせればすぐわかる。大昔ならともかく、今は社員が酒気を帯びることはほぼ100%あり得ない。万一帯びていたとしても、その場で注意し、一日運転させないのは当然の処置だ。別にわざわざ用紙に毎日記録するほどでもないだろう。面倒な管理が一つ増える。それが正直な思いである。ただ世の中で何度か酒気帯びによる痛ましい人身事故が起こったのは事実だ。そうした惨事を繰り返さないために法改正が行われたのは間違いない。

人間のリソースを奪う

 この世は、ごくごく一握りの人間による悪意や不始末によって、全体のルールが改正されていく。個人情報保護法しかり。ごくごく一部の人間が名簿を利用して悪質な商売や詐欺行為に走るから、誰もが個人の電話番号や住所を知れない世界を生み出してしまう。社会全体がどんどん窮屈になり、人間関係が疎遠になり、本来不要な義務負担を強いられる。人々の時間が奪われ、リソースが削られていく。どんどん生産性が落ちていく。

おおらかな世界へ回帰せよ

 10月から人々はアルコール検知器でフーっと息を吐き、サーモグラフィーで体温を測り、手にアルコールをかけ、ようやくゲートを通れるようになる。これをどこの建物に行く際も関所のようにこなさねばならないとしたら…。社会全体としてとても悲しい傾向だ。昔のようにおおらかで風通しのいい世界への回帰を願うばかりだ。