農家の悲鳴
産地は悲鳴を上げている。最近、生産者・出荷団体から聞こえてくるのは「燃油が高い、資材が高い、生産コストが上がっている、だからなんとか高値で販売してくれ」という声ばかりである。
農産物の製造原価
加工食品がどんどん値上がりしているのに、生鮮青果物はそうではないという問題については、2月23日のブログにも書いた。「製造原価は工業の世界の話であって、農業には関係がない」。もしそんな考えがあるのだとしたら、それはとんでもない勘違いだ。種にも肥料にも水にもトラクターにも費用は厳然とかかっている。ハウスを加温するには油を燃やす。人件費も大きい。農産物には製造原価があり、それを下回れば農家は作り続けることができなくなる。
我慢にも限界あり
〝農家は我慢してくれる〟という誤解もあるのではないか。実際、各地各品目で作付け面積は減っている。担い手が少なくなっている。合わないのでもうやめた、という事例は枚挙にいとまがないのだ。
高く売って…、無理だろうけど
先日もある野菜の初出荷初セリがあった。生産者代表と農協関係者が来場され、せりに立ち会われた。せり前に部会長が「なんとか高くお願いします」とご挨拶された。農協関係者が私の耳元で「本当に、なんとか高くお願いしたいです…でも無理やろなぁ…」とボソッと言われた。胸にグサッとくる思いだった。
抜本的な改革案とは
青果物の相場は、高く売りたい卸売会社と安く買いたい仲卸業者のせめぎあいで値段が決まる。安く買いたい仲卸…と書いたが、仲卸も産地には育ってほしいという思いが強いから、可能な限り高値で安く…という、一見矛盾した複雑な心境でせり等の取引に臨むのだ。だから、性善説的に言えば、卸も仲卸も高値で取引したいけれど、現実問題として製造原価のアップ分を吸収できるほどに値を上げられるわけではない。いっそ、全部を契約的に栽培し定量定額を買付けて、農家に保証すればいいのではないか、という議論も昔からある。が、よほど品質が良くて安定出荷ができる優良生産者ならともかく、ほとんどの農家でそれは無理なのだ。その年・その月の気象条件によって、品質はバラバラ、数量も大幅にぶれるのが農業の宿命だ。農政の根本的な改革として、最低価格保証ではなく直接保証に切り替える英断が下されればちょっと話は別かも。それ以外に私には解決策が見当たらない。とにかく、何か打開策を見出さないと日本の農業は廃れるがままであり、我が社・我が業界もますます苦しくなる。農業全体の構造から考えなければいけない。農業はやめてしまったら元にはもどらないのである。