甲冑解剖術展を観る
21世紀美術館で展示中の「Kacchu Anatomy」を観てきた。直訳すれば「甲冑解剖学」である。全国から取り寄せた個性的な甲冑を現物展示する他、甲冑をCTスキャンしたデジタル解析を披露している。
兵器でありファッション
戦国武将の鎧兜は、そもそも大陸から伝来したことが発祥だそうだ。鎌倉時代から日本独自の発展を見せる。武将一人一人、意匠を異にする文化が創出され、安土桃山時代に絢爛豪華の美的センスはピークに達する。甲冑は戦(いくさ)で生き残るための実用的な兵器でありながら、武将個人の存在を派手に着飾るファッションでもあった。猿の兜、髑髏(どくろ)の兜、蝶の兜、兎の兜、禿げ頭の兜…命を懸けた場において狂い咲かんとする洒落心(しゃれごころ)が非常に面白かった。
美しきスニーカー甲冑
そして、現代アーティストによる創作甲冑の展示もある。私は、スタイリスト三田真一氏が制作したスニーカーを素材とした女性の甲冑に心奪われた。日本の武者というより西洋的な騎士のイメージだが、何という格好良さと美しさ。髪(靴ひも)の長さと腰のくびれからは色気も漂う。純白が神聖で高貴な佇まいを醸し出していた。
アート、アート
本展示会はいかにも21美向けのコンセプトだ。壁に書かれた展示会のコンセプトからして只者が書いた文章ではない。結局何を意味するチンプンカンプンなのだが、ものすごいこだわりと情熱は伝わってくる。あまりに奇妙、あまりに奇天烈。企画した人はいったいどこに行こうとしているのだろうか。