藤原正彦先生の講演会には私にとっての裏話というか、自慢話があります。
この講演会は金沢の老舗料亭が会場で、100人程の聴衆、それも地元の名士が多く集っていました。
1時間程度でお話が終わると質疑応答もなく藤原先生はすぐに退出されました。
講演を聴いた後は参加者(聴衆)だけで懇親会へと続きます。
自慢話というのは、講演後、私一人だけが、藤原先生と、約20分にもわたって、一対一で、お話する機会を得ていたということです。
私自身は初対面であり、先生は雲の上の存在です。
けれど、実は私の姉が(もう40年以上遡ることになりますが)お茶の水女子大学に入学し、数学科・藤原ゼミで先生の教えを受け、以後今日まで何かにつけてお世話になってきた間柄なのです。
私が姉に「講演会に行く」と知らせますとすぐに「挨拶してきなさい。メールで知らせておくから」の命令wが来ました。
講演の前と直後は全くチャンスがなく、もしかしたらすぐにお帰りになったか?と思いましたが、ダメ元で係りの人に取り継ぎを求めたところ、10分ほどして「どうぞ」と案内されました。
そこは料亭の一番奥の小部屋で、先生はお一人で食事を取られたところでした。
あがってしまって、何を話したかはよく覚えていません。
ただ、お話の中で先生が「農業だけは絶対に守らなければいけない」とおっしゃったことが本当にありがたかったということを言いました。
記念の写真を撮るのを忘れた、というかちょっとした勇気が出なかったというか、ともかく証拠写真はありません。
しかし、この日はとてもとても有意義な、記憶に残る一日となったのでした。