今さらながら「イダテン」について

今年のNHKの大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』は1年間の平均視聴率が8・2%と初の1ケタに終わり、大河歴代最低記録となりました。

私は毎年、新しく始まった大河ドラマを必ず試聴し、面白ければ一年通してずっと見ますし、つまらなければ途中で打ち切ります。

ちなみに最近20作で最後まで見た作品は
利家とまつ(2002)、新選組!(2004)、風林火山(2007)、篤姫(2008)、天地人(2009)、龍馬伝(2010)、平清盛(2012)、八重の桜(2013)、真田丸(2016)、そして いだてん(2019)

途中でやめてしまった作品は
北条時宗(2001)、武蔵(2003)、義経(2005)、巧名が辻(2006)、江(2011)、軍師官兵衛(2014)、花燃ゆ(2015)、おんな城主直虎(2017)、西郷どん(2018)

なんと10勝10敗。勝率5割でした。
自分の好みの問題ですから、途中でやめてしまった作品をけなす気はさらさらありません。

で、「いだてん」です。
これはもう、私の中ではベスト3に入る面白い大河でした。
さすが宮藤官九郎。そううなったことが何度あったことか。

そもそも金栗四三と田畑政治をまったく知らなかった私としては、すべてが新鮮でしたし、1912年の日本人初の五輪出場から1964年の東京オリンピックまで、時空を行きつ戻りつして描く手法はとても映画的でした。

そして、若き日の古今亭志ん生に森山未來を起用して語り部も担わせるかたわら、劇中劇をポイントに挿入するのは非常に舞台的でした。
昔、演劇をやっていたからか、私は映画やテレビに舞台的手法が使われると敏感に反応してしまいます。

金栗四三と古今亭志ん生というまったく無関係な二人をつなぐ重要な役目をするのが、このドラマで数少ない架空の人物である「五りん」とその祖母・母の「シマ、りく」でした。

「五りん」を演じたのは神木隆之介。
「シマ、りく」二役を演じたのは杉咲花。

個人的見解ですが、杉咲花は、見る者に愛おしさを感じさせる日本一の女優だと思います。
シマが死んだときはかなり重度の「シマちゃんロス」に陥りました。

この親子は金栗・志ん生だけでなく田畑政治にも深く関わるシナリオにすべきでした。
五りんはほんの少しだけ田畑と接点を持ちますが、まったく物足りません。
この架空の親子が主役級の3者全員に人知れず深く関わっていたらこそ、50年以上にわたる時空が一つの感動の輪で結ばれたのにと悔やまれます。

いい大河は、役者が役作りにノっているのがわかります。
「いだてん」はシナリオ・演出もさることながら、役者が皆生き生きしていました。
これほど脇役のキャラが立っているドラマも珍しいでしょう。
下手くそだなぁと思ったのは大松監督を演じた徳井ぐらい(失礼)。

地味なところで中村獅童と大竹しのぶのコンビは抱腹絶倒でもあり涙腺崩壊でもある名コンビでした(別にコンビの役柄ではありませんでしたが)。

話を最初に戻します。
「いだてん」が最低の視聴率だったこと。
無礼な言いぐさかもしれませんが、これは今の日本人の劣化ぶりを端的に示していると思います。
このドラマの面白さがわからない、理解できない人々が大多数だというのはとても残念なことです。

ともあれ、私は「いだてん」には本当に楽しませてもらいました。
大河ドラマと朝ドラがこれからもどんどん面白い作品作りを続けてくれることを願ってやみません。
私にとっては勝率50%でも十分なので。

(日本一の女優・杉咲花が主演の朝ドラが2020年後期に始まります。楽しみですね。)