秘密会議?いやいや

2泊3日という私としては珍しく長い出張でした。
表向き理由は昨日の協議会研修会で講演を頼まれたことですが、私にとっての最大の目的はその研修会とは日時も場所もまったく別に開かれたこの秘密会議(?)ならぬ検討会にありました。

今、卸売市場業界は「指値差損をどう処理するか」が大きな問題点です。
指値差損とは。
市場は原則として農協などから卸売会社に「委託」の形で荷物が入ります。卸売会社はそれを仲卸などに販売し、販売金額を農協に支払い、販売代行の手数料を農協からいただく収益構造です。
「委託」なのでそもそも販売価格は事前に決まっていないはずですが、農協の力が強いと卸売会社には希望価格の支持が来ます。つまり「●●円以上で卸売会社は売ってくれ。下回るようなら今後はそちらには出荷できない」というわけです。この●●円という希望価格が別名「指値(さしね)」です。
卸売会社は荷物を出してもらって初めて商売ができますから、多少無理をします。つまり、本当は相場が安くて指値では売れないけど、農協には指値どおりで売れたことにしてお金を支払うのです。
実際はそれより安い値段(◯◯円)でしか売れていません。その差額(●●円−◯◯円)が「指値差損(さそん)」と呼ばれているもので、卸売会社としては欠損となります。

欠損なのでマイナスです。
しかし、そのマイナス費用の処理方法を巡ってさらに大きな問題が生じました。
多くの卸売会社はいわゆる「事故損処理」をやっていると聞いています。
しかし、その方法だと、マイナス分は卸売会社から農協への寄付、或いは贈与とみなされ、そのマイナス分にさらに税金がかかってくるという見解を財務省が出しました。
実際、ある会社は数億円の追徴課税を申し渡されました。
また、処理方法によっては卸売市場法上の違法行為にあたるという問題もあります。

これは、卸売会社にとっては踏んだり蹴ったりの状況です。
自ら身銭を切って多く支払ったのに、さらに税金を取られ、挙句に悪者だお前は!とのらく印を押されてしまうような感じです。まったく本意ではありません。
どうすれば、卸売会社の筋が立って、適正な処理として認められるのか。
そこに今浮上している可能性が「自己買受(じこかいうけ)」という処理方法です。
これは、卸売会社が受託した商品をその卸売会社自身が指値●●円で買い受け、そこから仲卸等に実勢価格◯◯円で売るというやり方です。

①卸売
「受託者たる卸売会社」が、「売買参加者たる卸売会社」に仕切価格で卸売を行う。
②兼業的請求
次に「売買参加者たる卸売会社」が、仲卸等に「兼業的」に実売価格の請求を行う。
②は「卸売」ではなく「兼業的」になるため、二重売り上げとはみなさない。
対外的に公表する数字は①の方を適用。

・自己買受であれば、②実売価格が①仕切価格より高く(減仕切)なっても問題ない。
・②に生じる完納奨励金は、自己買受せずに卸売した正規の完納奨励金とは厳密には区別すべきである。例えば「完納奨励金に相当するもの」という名目に。このため、完納奨励金交付基準を文書で制定している市場は、文言を修正したほうがよいと思われる。ただし新市場法下で農水は奨励金に関与しない。

以上、業界でない人にとってはまったく意味不明な内容でしょうが、卸売会社にとっては生命線となる重要問題です。
この手法が会計上も税務上も市場法上も問題がないのかどうかをよく検討した上で、新たな一歩が踏み出せればよいなと願っています。