ロシアのウクライナ侵攻を憂う

ついにロシアが進行開始

 恐れていたとおり、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。これは世界的にも日本にとっても特大の問題である。

プーチンの強行

 プーチン大統領はウクライナ東部ドネツク州とルガンスク州の親ロ派地域の分離独立を承認した。これをもって、両地域の戦闘への介入は正式な軍事行動だと理屈づけることになる。対してNATOは戦争に直接参入するとは思えない。ウクライナは同盟国ではないからだ。アメリカ・バイデン政権はアフガンを撤退したばかりで、その後始末のまずさに大批判を受けており、ウクライナに対しては行くも地獄引くも地獄の状況だ。プーチンの強気はバイデンの不甲斐なさを見透かしてのものだ。

目先も大火事

 ウクライナとロシアが全面戦争に突入し、キエフが陥落という最悪シナリオが目前に迫っている。どう転んでも穀物価格、原油価格が高騰し、世界経済に大打撃をもたらす。両陣営の経済制裁の応酬がさらに混乱に拍車をかける。ヨーロッパ各国はエネルギーをロシアに依存し、制裁は足並みが揃わないだろう。

対岸の火事に非ず

 この様子を中国はじっと見ている。ウクライナ情勢の今後の成り行きが中国の台湾への行動に直結する。台湾に手が伸びれば次は完全に日本の番だ。日本のメディアはどこかまだ他人事のような報道ぶりではないか。ウクライナは明日の台湾であり、あさっての日本だ。日本政府は覚悟をもって対応しなければならない。メディアは知見の乏しい者の起用を取りやめ、腹の座った議論を展開してもらいたい。

石川県県知事選告示

三つ巴の大混戦

 石川県知事選が24日に告示された。これは過去に例がない大きな選挙となる。新人5人の立候補は史上最多らしいが、実質は3人の有力候補による三つ巴の闘いだ。一人目は馳浩氏。プロレスラーとして活躍後、国会議員を26年務め、文部科学省の大臣を経験した。二人目は山田修路氏。元農林水産者の審議官で参議院議員を8年務めた。第一次産業への理解度は誰より深い。三人目は山野之義氏。金沢市長を3期務め、知事選出馬のため在職中に市長職を辞職しての出馬した。

選挙と人間の性

 三者ともに大物である。選挙前はお互いに何ら反目していたわけではない。むしろ政策的に共通する部分が大きい。要するに「私が知事になる」と三者三様に志を持たれたということだ。石川県民にとってはとても有り難く、頼りがいのあることだと思う。根本的には。しかし選挙は闘いだ。その過程で周囲の人間たちの様々な思惑も絡む。いつのまにかライバルの短所をあげつらうネガティブキャンペーンも聞こえてくる。もともと友好的だった人間関係に亀裂が入り、ついには後々まで尾を引く禍根を生む。人間の性とはそういうものか。

二人が野に下る損失

 誰が勝つかは大事だが、何よりもったいないのは勝利者は一人であり、二名は必ず敗れるということだ。超優秀超強力な人材が二名も野に下る。この選挙のために2人は国会議員を、1人は市長という要職を辞した。もう元には戻れない。これは県にとって(或は国にとっても)大きな損失ではないのか。総理大臣は失職しても衆議院議員として仕事は残る。首長選にはそれがない。

私は困っている

 私は三候補ともよく存じ上げている。どなたが知事になっても石川県のために粉骨砕身仕事をされると確信している。私が勤める会社と県政の距離も今よりグッと近くなると期待できる。だからこそ困っている。気軽に『私は○○さんを支持します』とは言えない。心の中で投票する人は決めているが、誰かを表明することは控えたい。そんな態度の人は私に限らず多いと思うが、意思を明確にしないのを優柔不断と非難する声もある。これも困ったことだ。ただし私がどれだけ困ろうとも、それ自体誰も何も困らない。その点は寂しいことだ。困ったり寂しかったり、そして誰が勝つのかドキドキしたり、何とも複雑な知事選の開幕なのである。

寒さと野菜の低迷

青果物流通の三重苦

 本来、2月下旬はまだ寒い時期には違いないが、青果物売場は春をイメージさせる野菜を前面に打ち出すのが毎年の常だ。豆類や山菜など芽のもの、菜の花や早堀りの筍などが消費者に喜ばれる。しかし今年は様子が違う。寒波で春の野菜の生育が鈍い。燃油が高いからボイラーも炊けない。だから収量が少ない。消費者はあったかいものが食べたいから需要も伸びない。三重苦四重苦でいいことはないのである。

値上げがなかなか起こらない理由

 数が少ないからといってそれほど値段が高いわけではない。加工食品が軒並み値上げに踏み切っているのとは対照的だ。生鮮青果物はあくまでも需要と供給のバランスで相場が構成される。そのくせ高値の時ばかりニュースに取り上げられ、そのマイナスイメージで需要を抑制する。本当は、加工食品同様、青果物も値上げしたいのだ。本当は、こなれた価格帯が多い青果物の優良性をもっと認知してもらいたいのだ。マスコミ報道はたいがいその逆を行く。声を大に「価格を上げろ」と言うと悪者にされる。だがそれでは長期的には第一次産業は育たない。

流通のあり方の変化

 需要と供給のバランスでなく、原価意識をもった生産・販売で成功するケースが少なからず出てきている。しかし残念ながらそうした新しい流通の牽引役は市場外流通が主に旗を振って来た歴史がある。そこがダメなのであって、市場流通こそが担い手にならねばならぬ。人材育成と仕組み作りと営業量&企画量。それがすべてだ。そこに労働と資本を注入しなければいけない。

いったいいつまで雪が降る

またも北陸に雪が降る

 こちらはまた大きな積雪となった。金沢市には大雪警報が出された。数日前の予報ではそこまでひどくなく、今回ちょっと意表を突かれた感じだ。最近は天気予報の精度がちょっと落ちていないか。降る降るといってほとんど降らず、前触れなくどかっと来ることが重なっているような。お天気予測が信じられなくなるのは、仕事上も生活面でも極めて困る事態だ。

雪かき貧乏性

 最近降る雪はサラサラですぐ溶けるし、軽いので雪かきも比較的楽だ。しかしあっと言う間に10センチ程度積もる。我が家は高台だから中心市街より一段雪深い。油断すると車が出せなくなるので、こまめな除雪が必要となる。暇さえあれば家の前を雪かきする私を見て妻はそこまでしなくてもと呆れているが、早朝の私の出勤、母を送迎する介護施設の車の出入り、受験の息子の出入り等を考えると心配でそわそわしてしまい、何度もやるはめになる。雪かき貧乏性だ。

一種の異常気象か

 こんなに寒い日が続く2月は記憶にない。これでもかと寒波が襲来する。1回の積雪量でもっとひどいのは過去たびたびあったが、いつまでもやまず終わらずが今年のパターンだ。約1ヶ月前にまとまった積雪があった時、能登のファームの農場長と『もう今年の雪はこれで終わりだね』なんてお気楽なことを話し合っていたが、その後何度も除雪するはめになった。大外れである。

市井の生活レベルがあらわに

 雪が積もると、街中の民度があらわになる。貸し駐車場はたいがい沈没している。土地のオーナーは除雪までやろうとしない。月極めは借り手の責任ということだろう。借り手は借り手で、自分のスペースだけしかやらない。よってパーキングの出入り口はとても汚くなる。開店営業するさまざまな店舗も除雪レベルで大きな差ができる。人員の都合もあろうが、お客を迎え入れようと真摯なお店はやはりこぎれいに除雪してある。民家は空き家かどうかがすぐにわかる。アパート、マンションになると管理人と居住者の意識レベルで大きく差ができる。

雪かきで近所交流

 悪いことばかりではない。日曜になると、近所の人たちが総出で家の前を除雪する光景が見られる。現代では失われたご近所との交流が復活する感じでほのぼのとする。除雪は時にはよいものだ。だが、やはり今期は多すぎた。もう十分だ。さすがに今回ので雪は終わりと信じる。これで外れたら気象予報士の無能を呪い、異常気象の進行を憂うしかない。

北京五輪は挫折のドラマ

北京五輪が終わって心に残ったもの

 北京オリンピックが終わった。日本は冬季五輪史上最多の18個のメダル(金3、銀6、銅9)を獲得した。高木美帆はメダルを4つ取り、平野歩はスーパージャンプを見せた。だが大会が終わって強く印象に残ったのは、アスリートの挫折した姿だった。

羽生敗れたり

 その筆頭は羽生結弦である。ショート冒頭の4回転ジャンプで足がリンクの穴にはまり、8位に出遅れる。フリーでは史上初めて4回転アクセルの認定を受けるが、着地は失敗し総合4位でメダルを逃す。結果だけを見れば栄光からの転落だ。だが羽生の場合はそれで終わらない。その後のコメントが圧巻だった。

報われない努力

 『人生って報われることが全てじゃないんだなと。ただ、報われなかった今は、報われなかった今で幸せだなと。不条理なことはたくさんありますけど、少しでも前を向いて歩いていけるように、頑張っていきたい』…これはもう、煩悩を断ち切り悟りの境地に達した僧侶の言葉である。

9歳の自分が心の中で語りかける

 『僕の心の中に9歳の自分がいて、あいつが跳べって言っていたんですよ。で、ずうっとお前、下手くそだなって言われながら練習していて。でも今回の4回転半は、なんか褒めてもらえたんですよね。一緒に跳んだというか。…中略…最後に壁の上で手を伸ばしていたのは9歳の俺自身だったなと思って。で、最後にそいつの手を取って、一緒に登ったなという感触があって』…これはもう、自分自身と何万回も対話をし尽くした詩人の言葉である。

敗れし者に幸あれ

 他にも女子スキージャンプの高梨沙羅の失格と直後の大ジャンプ、金を目前に最終コーナーで転倒した高木菜那の号泣と背中をさする押切美沙紀、ワリエワのドーピング問題とフリーでのミス連発…など、敗れ去る姿が衝撃的なものが多々あった。スポーツであれ人生であれ、自分たちの力では及ばない、見えない何かに翻弄されることがある。頂点を目指すアスリートは他のすべてを犠牲にしてきただけに、〝ちゃんと負けずに〟終わってしまった場合、心のケアが懸念される。高梨とワリエワにはなんとか立ち直ってほしい。大袈裟に言えばこのあとの人生で幸せになってほしい。羽生の言葉をもう一度借りれば、世の中に不条理なことはたくさんあるけれど、少しでも前を向いて歩いて頑張ってほしい。そんな思いが強く残った五輪であった。

青果物の週間情報 【2022-W8】

■週の概況 第8週 2/21(月)~ 2/26(土)

【全体】

 2月としては異例に冷え込みがきつく、青果物の流通量がなかなか増えてこない。数量が少ない分、昨年よりも単価の高い状況が続いている。この週の前半も厳しい寒さが続くため、前週の流れを引き継ぐと思われる。しかし、後半からは状況が一変しそうだ。気温が一気に高まって消費の嗜好ががらりと変わると予想される。大根、馬鈴薯、白菜などの煮炊き商材は動きが鈍り、豆類、菜の花等の春野菜の需要が高まるだろう。ただ、気温の上昇が生産量の増加に結び付くのにはしばらく時間がかかるため、供給>需要で相場が軟調に転ずるのはもう1週間ほど後ろにずれこむ見込みである。

 果実はイチゴと中晩柑が中心である。イチゴは数量潤沢で価格も下がってくるだろう。柑橘は施設物から露地物へ移行する時季であり、品種の切り替わりも進む。メロン類も少しずつ顔を出し始める。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、レタスは茨城産の入荷が増量し、価格は下げに向かう。反対に白菜は主要産地の数量が減少し価格は上がるだろう。キャベツは生育状況が回復し、数量の増加が期待できる。菜類では全般的に前年より少なく、小松菜については単価の底上げが予想される。アスパラはメキシコ産の春作物が最盛期を迎え、前年並みの入荷となる。

 果菜類では、胡瓜は産地により数量のばらつきが見られるものの、全体的には増加傾向だ。価格は下げに向かう。トマトは愛知産が微減傾向となり価格の底上げが見込まれる。ミニトマトは減少し、価格は上げ予想となる。茄子、ピーマンの数量は少なく、価格は底上げとなる。

 根菜類では、大根は千葉産を主体に概ね前年並みの入荷だが、低温の為太物比率は低い。かぶらは寒さから前週より少ない模様。蓮根は冷え込みにより不安定な入荷で価格は上がる。馬鈴薯は北海道管内の切り上がりが早く、数量の確保が難しくなる。玉葱は産地残量が少なく価格はさらに一段上がる見込みだ。

【果実】

 国内果実では、デコポンは鹿児島産メインに前年を上回る数量となる。伊予柑は依然として小玉傾向で最盛期だが数量は伸び切らない模様だ。苺は2番果ピークから、価格はもう一段下げが予想される。メロンでは熊本産の青肉系、赤肉系が入ってくるも前年を下回る数量となり、単価は高値基調となる。季節商材では、鹿児島産・宮崎産の金柑、高知産の文旦が入荷中だが文旦は作況悪くかなり少ない。

 国外果実では、バナナは国外での需要の高まりから不安定な入荷が続き、数量は前年を下回る見込み。シトラス系は各品目で数量が少なく高値推移となるだろう。

在庫の概念

在庫の数値管理

 在庫のチェックは重要だ。青果物は時間とともに品質が劣化し、短時間で価値がゼロとなる。特に委託物品の場合は〝人さまの所有物〟を預かっているわけで、基本的に在庫を残すべきものでない(それでも極度に販売不振の時は残ることもあるが)。対して買付物品の場合は、在庫を持ちつつ販売することが少なくない。販売担当者が一日に抱える荷口の件数は数十、多い者で100件を超えるから、とにかく管理が大変だ。時にうっかりミスで処理(販売入力)が漏れたり、ダブって仕入を上げたりして、帳簿に長期的な在庫が残ったりする。その正体が何であるかを突き止め、常にクリアな在庫データに更新していくことが管理者の役割だったりする。卸売会社の営業はまだ在庫の意識は高いほうだ。在庫の数値管理は、数量(箱数)でどれだけ、金額換算でどれだけと両面から把握するのが常識である。

仲卸の特殊性

 ところが、仲卸業者になると人によって数量(箱数)の把握が曖昧な場合がある。決して頭が悪いわけでも性格的にルーズなわけでもない。卸売会社は数量と金額が比例するのに対し、仲卸はそうでない。仲卸の段階で商品の規格が変わることがままあるからだ。わかりやすくいうと、卸売会社は箱で仕入れて箱で売る。単価○円×数量■箱だ。だがそれを買った仲卸は、作業場で1袋4本入りなど小袋に形態を変え、1パックいくらで八百屋、スーパーに販売・納品する。よって、仲卸の在庫管理は、箱数ではなく金額のみで把握するという側面がある。

不正取り引きを防ぐ重要性

 在庫管理は、品質劣化の激しい青果物において損益管理の基本になる。逆に言えば、ルーズな在庫管理を放置することは不正の温床になる。大昔から今日まで、青果市場業界では、卸と仲卸の心無い者同士が結託し、売買金額を横領する事件が時折り起こる。古くより全国的に様々な不祥事があったが、当市場でも昔、不適切な販売実態が発覚し、問題になったと聞く。仲卸段階で数量管理がかなり複雑・煩雑になる実態がある以上、せめて卸売会社の段階では数量と金額の両面からの徹底した在庫管理が要求される。

親孝行と別離

親戚の他界

 病気で20年近くも不自由な体を強いられ、近年は施設に入っておられた親戚がいる。1ヶ月ほど前、遠方に住む息子さんが3日間ほど帰ってきて、その間は一緒に寝泊りできたし、外食に出ることもできた。しかしその直後に倒れられた。脳溢血だったそうだ。その後ずっと意識不明。今日か明日かと心配されながら何とか持ちこたえてきた。しかし残念ながら水曜日に逝去された。

この上ない親孝行と悲しい別れ

 本日、葬儀に参列した。ごくごく内輪だけの会だった。息子さんからは「僕が母を外に連れ出したばっかりに…」と悔やむ言葉も出た。お気持ちは痛いほどわかる。運命とは時に酷で皮肉な仕打ちをする。だがその三日間は、お母様にとってこの上なく幸せな日々だったことだろう。最後に大きな親孝行をされたのだ。自分を責める必要は微塵もない。故人は、重い闘病生活の中でも周りの人に細やかな愛情を投げかけられた方だった。私の姉や妻、そして母が病気になった際も心の支えとなる本を送って下さった。どんなに自分の境遇が不幸でも、周囲への思いやりを欠かさなかった。もし私が同じ境遇になったとして、このような強さとやさしさを持つことができるだろうか。

ご冥福をお祈りします。合掌。

息子が受験で東京一人旅

コロナのせいで一人旅

 受験シーズンに突入し、うちの高3の次男坊は東京の某大学の入試に臨む。今日から2泊3日の一人旅だ。もう18歳だから親から離れて一人で行くのは当たり前、と言われてしまえばそのとおりかもしれない。だが、最初から最後まで知人の助けをまったく借りない遠征は初体験であり、親としてはちょっと心配になるのも正直なところだ。最初、母親がついて行こうかとも思ったが、このオミクロン旋風で断念した。

40年前の思い出

 古くを思い出せば、私は高3の受験の時、姉と親戚に大いに助けてもらった。試験の前日に電車に乗って東京駅に行く。そこに大学4年の姉が待ち構えていて、2泊お世話になる綾瀬の親戚の家への行き方、試験会場までの電車の乗り継ぎ方などを手取り足取り教えてくれた。食事は綾瀬の親戚が世話してくれた。それほど至れりつくせりなのに、初めての東京はやはり少しおっかなかった。

それなりにいい経験

 今回の息子は助けがない。一人で電車を乗り継ぎ、一人で会場を下見し、一人でホテルに泊まり、一人で食事を取る。一回経験すれば簡単なことだが、未経験のうちはやはり心細かろう。私は台湾一人旅の時、いいおっさんになってもビクビクだった。親バカかもしれないが、今回出来る限りのことをしてやった。ホテルの予約、切符の予約、3日間のスケジュールまとめ、モバイルSUICAのセットなどなど。アイフォンのSUICAアプリ導入がやたらハードル高く難儀した。ここまでフォローしたので、一人旅とはいってもかなり世話をやいたことになる。大学に合格できるかどうかは全くの別問題だが、息子にとってはそれなりにいい経験になることと思う。

石川ブランド農産物の自家増殖を禁止

改正種苗法の施行を受けての規制強化

 本日の北國新聞一面の記事だ。石川県が開発した20品種について、4月から「自家増殖」が禁止となる。石川のブランド農産物を保護することが目的である。地域独自のブランド品の種や苗は、開発者の権利が保護されなければいけないが、不正に海外に流出する事例が後をたたない。このため、種苗法が改正されて間もないが、その中での自家増殖の許諾制に対し、石川県が独自に「一律禁止」という厳しい対応を取ることでブランド保護を明確に打ち出した格好だ。他県よりも厳しい規制である。

対象品目

 対象となるのは以下のブランド農産物である。
【米】ひゃくまん穀、ゆめみづほ、石川門、百万石乃白
【ぶどう】ルビーロマン
【ナシ】加賀しずく
【花き】エアリーフローラ11品種
【りんご】秋星
【かぶ】加賀姫青
【大根】長根系源助

処罰内容

 これまでも、苗の流出を阻止するため、石川県と生産者は契約の上、苗木の第三者への譲渡ができないルールを定めてきた。よって生産者の栽培姿勢としては今までと変更はないとのことだが、規制がより明確かつ厳しくなる効果が期待できる。悪質な違反は刑事罰対象になり、10年以下の懲役、1千万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下)の処罰が下される。

厳格なる保護政策を望む

 開発品種の海外不正流出はひどい有様で、日本が誇る素晴らしい開発ノウハウが外国の心無い者たちによってたやすく簒奪されてきた。今までの保護制度がザルすぎたのである。日本の財産が盗っ人に奪われてきたのと同じだ。近年になってようやく目が冷め、規制強化に舵を切った。石川県のような零細な農業生産県は、大規模な青果物生産は望めない。希少だが価値の高いブランド品の振興は生命線といえる。行政と生産者が一体となって地域限定の開発品を守る体制をさらに強化してもらいたい。