バナナ色付け加工(基礎知識)

そもそもバナナ加工とは?

 当社はバナナ加工センターを有し、自社でバナナを加工し販売している。そもそも「バナナ加工」とは何ぞやから説明する必要がある。決してバナナチップスを製造することではない。バナナはほぼ100%輸入品である。主な産地はフィリピンやエクアドルだ。日本に輸入される際、黄色く熟した状態ではなく緑色で未熟な「青バナナ」で入ってくる。これは「植物防疫法」とい法律で定められている。塾したバナナには害虫が潜んでいる危険性があるのだ。「青バナナ」はそのままでは食べられない。密閉された加工室でエチレンガスを浴びることで追熟が始まる。ガスをかけることでバナナを覚醒させるのだ。その後4~5日程度追熟を進ませることでバナナは食べられる状態となる。緑色が黄色くなることから、我々の業界ではこの加工を「色付け」と呼んでいる。色付けといっても決して黄色い絵の具を塗るわけではない。

バナナ加工センター機能

 バナナの加工センターは(当社の場合)以下のような機能を有する。

・16,000ケース以上を一度に色付け加工できる
・差圧ファンが反転することで、均一な色付けが可能となる
・全館空調完備で、17℃平均の定温管理により品質劣化が防止できる
・電気料金は、旧式型より約9%低減し、コストダウンを実現している
・箱を積み替えずに搬入、加工、搬出が可能となり、作業軽減が図られている

きめ細かい顧客対応

 青果卸売会社が色付け加工を自前で行うことは、昔は当たり前だったが今ではかなり少なくなった。今やほとんどをバナナの輸入商社が色付けも含めて請け負っている。うちは踏ん張って未だに自社加工をしている。北陸地方の顧客に多商社・多ブランドを適量適時に供給することが地域のバナナ流通に一番貢献できると思うゆえである。加工スケジュールは緻密さが要求される。顧客のニーズに応じ、どのブランドをどれだけ、いつ室(ムロ=バナナを熟成加工させる密室倉庫のこと)に投入するか、エチレンガスの量はどれだけにするか、温度設定をどうするかなど、さじ加減が極めて難しい行程である。数多くの顧客の注文に応えるべく、バナナセンターの稼働率はいつも100%である。

白内障手術は仁術なり

同級生の西村彰医師

 2月10日のブログのとおり、先日行った白内障手術は、中学高校時代の同級生である西村彰君にやってもらった(同級生だから君付けで呼ばせてもらう)。西村君は金大附属病院で准教授になり、白内障、緑内障、網膜剥離などの治療で第一人者となった。当時は県外からも患者がおしかけ、順番待ちでなかなか診てもらえないと評判だった。その後独立し、2013年に金沢市の高尾台で「西村眼科」を開業し現在に至る。

即断即決のオペ

 私はここ1~2年で急速に視力が低下したので、前もってメールで連絡してから西村眼科を訪問した。

彼「そろそろ手術を考えてもいいね」
私「やはりそうか。ではお願いします」
彼「…(※)…。ちなみに今日でもいいけど」
私「あ、なら今日やっちゃいたい」
彼「じゃ、やるか」

 こんな調子で、手術は即決となり、局部麻酔から実質20分程度で終了した。痛みなし、入院なし。この日だけ眼帯をしたが、翌朝起きてはずしてみると充血も腫れもなく、視界が見違えるほどクリアーになっていた。あとは毎日3種類の目薬を差すだけで完治する。なんともスピーディーに事が運び、眼のトラブルは解決した。

手術の日を知らせるな

 西村君の適切で素早い治療はさすがだった。しかしそれだけではない。彼を昔から知っている(つもりだった)私だが、今回初めてわかったことがある。それが上記会話の※の部分だ。彼はこんなことを言ったのだ。

〝手術する日はいつでもいいよ。受付で予約してくれ。ただしその日がいつなのか、僕に教えないでくれ。知ってしまうと前日の寝つきが悪くなるかもしれない。或いは夜中に目が覚めてそのまま眠れなくなるかもしれない。自分の友人や親戚だと過剰に意識するからね。寝不足は手術に支障が出る。だから手術は当日まで知らない方がいいんだ〟

繊細さと誠実さ

 彼がそのような細かい神経の持ち主だったとはつゆ知らず、いささか驚いた。これまで白内障20000件、網膜硝子体5000件、緑内障150件もの手術をこなした辣腕医師である。鼻歌混じりでチョチョイとオペをこなすイメージがあった。だが違った。自分の体調整備、メンタル管理に慎重に臨んでいる。驚くと同時に彼の誠実さとやさしさ、仕事への真剣味に少なからず感動した。私は彼のように繊細にはなれないかもしれない。が、物事への向き合い方として、見習うべきことは多々あると感じた。

医は仁術なり

 手術直後、西村君は「終わったよ。無事に済みました」と私に声をかけてくれ、続いて「あー、宿題が一つ終わったな」と言って、フーッと大きくため息をついた。繰り返すが何万回もオペをこなしてきた一流の医師だ。その彼が緊張していたことが察せられた。なんと有り難いため息だろう。後日、術後良好ですと私が言うと「よかった、よかった」と医者らしからぬもの言いをした。古くさい表現だが〝医は仁術なり〟という言葉が浮かぶ。彼が眼科医として評判なのは、腕の良さもさることながら、この人柄が一番の理由かもしれない。

青果物の週間情報 【2022-W7】

■週の概況 第7週 2/14(月)~ 2/19(土)

【全体】

 大雪の影響は、北海道産の物流の大きな乱れに現れた。特に代替の効かない玉葱の更なる品薄・高騰がこの週も後を引きそうだ。また、全国的に冷え込みがきつく、露地野菜を中心に数量の伸び悩みが見られる。この傾向は葉物にてきめんで、白菜、レタス等の結球野菜の数量減・相場上昇につながると思われる。青果売り場では春商材を前面に出したい時季だが、寒さで需要がついてこず、豆類などの消費は鈍いようだ。

 果実も全体的に数量は少なめで、単価は例年より高めの品目が目立つ。その筆頭はイチゴだが、徐々に増量となり値段は落ち着いてくると思われる。柑橘類は種類豊富で食味も良好だが、基調としてやはり高値感が漂う。

 まん延防止措置の中で飲食店は苦境に立たされており、消費は全般で不振気味だ。すなわち数量は少なく引き合いも弱いというダブルパンチにさらされており、厳しい販売環境に耐えなければいけない週となりそうだ。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、レタスは茨城産のスタートで数量が安定するまでは、高値推移が続く見込みだ。ただしキャベツは週頭に価格を下げ、やや低空飛行で週を過ごすことになりそう。白菜は数量の減少から単価上昇の見込み。アスパラは潤沢な入荷が予想される。

 果菜類では、胡瓜は天候不良の影響から入荷にばらつきが出るだろう。茄子は産地での生産量が少なく、相場は強含みの見込み。トマトは前年を下回る入荷が続き、価格の底上げが予想される。キセラインゲンは数量少なく、価格は上がる気配だ。春菊やみつばは需要も落ち着き、安定した入荷から弱含みの展開となるだろう。

 根菜類では、人参は愛知産、県内産より安定した入荷となるが、愛知産は下旬にかけ減少が予想される。馬鈴薯は北海道産が降雪の影響により輸送が乱れている。玉葱も輸送の混乱から産地の出回りが少なく、価格がもう一段上昇する見込みである。長芋の価格は下げに向かい、前年を下回る値動きとなる。

【果実】

 国内果実では、苺は愛知産をはじめメイン産地では2番果がピークを迎え潤沢となり、価格は下がる見込みだ。みかんは徳島産の入荷で前年より少ない量の中、高値推移が予想される。デコポンは相場が上昇するも、昨年より安値レベルを維持する。キウイフルーツは各産地半作に近い不作傾向であり、品薄から価格レベルは高い。季節商材では、愛媛産のせとかや甘平の入荷がある。

 国外果実では、バナナは海外での需要が高まって日本向けの入荷が不安定な環境で、数量は前年を下回る見込みだ。アボガドも海外需要の高まりと冷害による不作傾向が相まって、単価高推移が続くだろう。

日本赤十字社の姉ちゃんに屈するの巻

献血ダイレクトコール

建物は立派だが、中に採血設備なく、血はバスで採る。変な建物だ。

 昨晩、日本赤十字社と名乗るお姉さんからスマホに電話がかかってきた。血液が大きく不足している、明日献血してくれないか、との依頼だ。直電するほどにピンチなのか。快諾するとお姉さんはものすご感謝してくれた。明日ボクはVIP待遇かもしれない。景品もゴージャスかもしれない。そう思った。

コロナで血液不足

 調べてみると、血液不足は間違いない。今、金沢市鞍月にある献血センターは改修工事で閉鎖しており、そこに自主的に足を運んでくれる献血者の分がまず不足する。そしてコロナ禍で献血バスの巡回行動が滞っていて、必要量の1~2割が足りてないとのことだ。それにしても、ダイレクトコールまでして血を確保しようとする赤十字の努力には頭が下がる思いだ。

あの女、うちに欲しい…

 本日、指定場所に行った。そして予想していなかった光景に出くわす。私と同じ立場とおぼしきおっさんおばさんが長~い列をなしていた。ごくフツ~に血を取られ、ごくフツ~の景品をもらった。ううむ、あの姉ちゃんにしてやられた、とは言うまい。献血はあくまで奉仕の精神。見返りは求めない。ただ彼女の営業力の前に敗北感があるのみ。あの女、うちの会社に欲しいな…そう思いながら私は景品のジュースをチューチューすすったのであった。

今回の獲物

変則的片肺休開市

本日の金沢市場は片肺

 本日は建国記念の日であるが、金沢市場の青果部は臨時開市日で、水産部は祝日休市であった。一昨日の水曜日は反対に青果部が臨時休市日でお休み、水産部は開市だった。つまりこの一週間で水・金がいわゆる片肺となった。野菜と魚の両方を仕入に来る業者さんにとって不便この上なく、片肺はお叱りを受ける。また、市場周りで開店する関連事業者の方々からも評判が悪い。片一方が開市ならば結局両日とも働かざるを得なくなるからだ。

今年の特殊事情

 東京と大阪の巨大市場で休みが合わない日が年間に数日ある。例えば青果部が東京パターン、水産部が大阪パターンを選んだ場合に片肺は起こる。人のせいにするな、金沢は青果と水産で歩調を合わせよとよく言われるが、農協は巨大市場の休日設定に合わせて出荷スケジュールを組むので、地方の市場としては独自に決められるものではない。これは以前にも書いたとおりである。今年に限り特殊なのは、東京市場が〝金曜が祝日の場合は水曜を休んで金曜は開市する。金曜以外の曜日が祝日の週は、暦どおり祝日を休んで水曜は営業とする〟という今までになかった考え方を導入したことだ。今年は2月、4月、9月で金曜祝日があるから、その日は東京と大阪で休市が違った。

何が正しいかは立場によりけり

 我が社の社員に感想を聞いたところ、営業マンとしては飛び石連休よりは水曜・日曜休みに固定にした方がやりやすいという意見が多かった。祝日があろうがなかろうが、買い出し人にとっては水曜日は休みという意識が強く、水曜に市場を開けても売上は厳しいのだ。よって、今回のような金曜祝日営業は正解、ということになる。だがこれはあくまでも卸売市場側の都合だ。産地は、暦どおりの休市の方が良いと考える人が多い。また、卸や仲卸も、従業員の立場とすれば、暦どおりの休みの方が良い。家族と休日を過ごしたいのは当たり前だ。

そろそろエイヤと決めてはどうか

 卸売市場業界の休市はここ10年程度でかなり〝世間並み〟に拡大・整理されてきた。それは基本的に良いことだ。だが、毎年マイナーチェンジを重ねながら今でも右往左往している。東京と大阪、都会と地方、水産と青果で立場が微妙に違うことは当然あるが、そろそろエイヤっと定めてしまってはどうか。決めてしまえば迷いがなくなり、どの立場もそれ相応に対応していくはずである。

白内障手術

診療後即日実行

 私は先天的な白内障で、左右の瞳ともにポツンと白い点がある。また子どもの時から左右の視力が大きく違うガチャ目だ。今まで近眼老眼の進行は何十年に渡ってゆるやかだったが、この1~2年で急に視力が落ちだした。そこで昨日、会社が休みの日であることを利用し、中学高校の同級生である眼科医の西村君に診てもらった。白内障が進んでいるという。急遽、手術してもらうことにした。診療を9時に受けてオペ即決、その5時間後に執刀、14時20分終了という超早業だった。この経緯については面白いことがあるので後日また書く。

手術の概要

 白内障とは、眼の中にある水晶体が濁る病気だ。手術はこの水晶体を取り除き、代わりに人工レンズ(眼内レンズ)を眼の中に挿入する。私の場合、右目はコンタクトでまだ視力が保てるので、左目だけ施術することにした。レンズは、3メートル先の1点にピントが合う単焦点レンズにした。遠近両方が見える多焦点レンズもあるが、クリア度に問題がある。単焦点だと手術後も手元の小さい字を読みづらく老眼鏡が必要になるが、別に構わないと判断した。

15分の手術

 手術中は、まぶしい光を凝視するので何が行われているか見えない。ただ目にメスが近づいてくる気配はわかるので非常に怖い。麻酔が効いて傷みは全くないので、ただ怖いだけだが、体がガチガチにこわばった。まず水晶体を包む袋(水晶体嚢)に切れ目を入れる。水晶体嚢の切れ目から器具を入れ、超音波で水晶体を砕きながら吸引して取り除く。そして空になった水晶体嚢の中に眼内レンズを入れ、固定する。レンズの埋め込みが終わると、眼にふんわりとガーゼをかぶせ、眼帯で軽く押さえて終了。手術はものの15分で終わった。

クリアな世界

 家に帰ったらほっとしたのか4時間も昼寝してしまった。この日一日は風呂禁止であった。起きて夕飯を食べ、またすぐ寝た。そして今朝となる。緊張の一瞬だった。眼帯をはずしてそっと目を開ける。おおっ!左目がこんなに明るくすっきり見えたことがあっただろうか。傷みも充血もまったくなしで術後良好と思われた。右目は今まで通りコンタクトで矯正する。と二度目のおおっ!だ。左と右の見え方が極めて近い。ガチャ目人生では、両目が開いていてもどちらか片方でモノを見ることが多かったが、今後はようやく両目でものを見る生活になるのかもしれない。医学の技術とはすごいものだ。即断即決は大正解だった。西村君には感謝感謝である。

怖い言葉だ「JPCZ」

久々のドカ雪

 先週末にやってきたドカ雪は久々にすごかった。土曜、日曜にかけて何度も何度も雪かきに追われた。ひどい降りの時はみるみる雪が高くなった。自宅前は10センチ程すぐに新しく積もり、それを雪かきしてはまた積もり…の連続だった。この寒波は「JPCZ」と言うらしい。日本語では「日本海寒帯気団収束帯」という。こんな言葉、絶対覚えられない。

その名は石川殺し?

 テレビの解説動画は、あたかも雪の雲軍団が石川県めがけて次々突撃してくるように見える。「JPCZ(ジェーピーシーゼット)」=「ジャパン(JP)のいシーかわ(C)の終わり(Z)」。つまり「石川殺し」の略だ。嘘だ。本当は「JPCZ」=「Japan sea Polar air mass Convergence Zone」の略だ。未来永劫覚えられない。

JPCZの仕組み

 理屈はこうだ。北から強い寒気が南下すると朝鮮半島でいったん東西にわかれる。ペクトゥ山などの高い山にぶつかって割れるためだ。その後、日本海側に近づいた時に再び合流する。日本海の海水温は比較的高いため、大量の水蒸気が供給され、雪雲が発達する。雲雲は筋状になり、長さは1000キロにも達する。この雲が連続的に流れ込むため、平地でもわずか数時間で大量の積雪となるのである。時に太平洋側でも大雪になる。

懐かしき四季折々の移ろい

 出どころは気象庁なのか報道機関なのか知らないが、〝数年に一度の強烈な寒気〟という表現をよく耳にする。やめてもらいたい。数年に一度がなぜ立て続けに来るのだ。言葉が軽く信用できない。ボジョレヌーボーなら笑って済ますが、気象情報は公的機関の言だろう。それとも、かつては数年に一度だったのに今は立て続けになるほど地球は異常な状態ということか。いずれにしてもこの「JPCZ」は言葉が覚えにくいことも相まって恐ろしさ、得体の知れない不気味さを感じる。夏の猛暑も冬のJPCZも要らない。四季折々、穏やかに移ろい行く日本の気候に帰ってきてもらいたい。

リモートで90%こなせる

陽性反応が出た当社社員の場合

 新型コロナウイルス・オミクロン株が大流行する中、1月下旬には我が社の社員1名にも陽性反応が出た。会社の中でも販売面で重責を担う立場だっただけに影響が心配された。当人はまず自宅療養、途中からホテルで隔離生活となった。症状は大したことはなく、自宅・ホテルでできる仕事はすべてこなした。電話やラインで顧客と商売し、モノの移動は部下に指示した。

営業は現場がすべては過去の話?

 隔離は結局12日間に及んだ。先日から復帰。その間の仕事ぶりを確認したところ、普段やっていた仕事量の90%はリモートでこなせたとのことだ。昨年夏に別の社員が感染した時もほぼ同様だった。市場の営業は現場にいなければ仕事にならない、というのは昔の話である。

制度の変更、社風の改善

 もちろん、相手と面と向かわなければならない時はある。また、あまりに楽な方に流れるとだんだん人は怠惰になっていく。だが、時間とメンタルに余力が生じ、生産性が上がるメリットの方が大きくなるはずだ。これを機に、コロナであろうがなかろうが、どこでも仕事ができる体制にシフトしたい。会社としてそういう制度を整備すること、部内での人間関係・協力関係を深めること、取引先の理解を得ること、早朝に来てサービス残業をすることが美徳であるという価値観を捨てフレックスなものの考え方ができるよう社風に変えることが必要だ。

舞台レビュー:VOX OF JOY 「Sign~天使からの贈り物~」

ゴスペルミュージカル「Sign(サイン)~天使からの贈り物~」

日時:2022年2月5日(土)6日(日)昼夜4回公演
場所:金沢市民芸術村パフォーミングスクエア
主宰:VOX OF JOY Choir

概要

 音楽家の中田理恵子氏が率いる金沢のコーラスユニット「VOX OF JOY(ボックスオブジョイ)」のゴスペルミュージカル「Sign~天使からの贈り物~」を観た。台本、音楽、踊りすべてがオリジナルだ。特別出演の本間ひとし氏など除き、役者のほとんどがミュージカル未経験者である。よって2019年から3年計画で少しずつスキルを積み上げ、中身を紡ぎ上げてきた。ひとえに中田理恵子氏の情熱とその生徒たちのひたむきさが結実した労作といえる。

あらすじ

 舞台は図書館。人間一人一人には陰ながらずっと見守る天使がいて、読むべき本にいざなったり、大切なことを気づかせる「サイン」を送ったりしている。小説家志望の「ハル」は、かつては出会う本にときめきを感じながら成長してきたが、最近は自分の作品が世に認められたいと焦るあまり、人型AI「マリ」に依存し、データベースから話のネタを切り貼りする執筆活動に終始している。彼女を見守る見習い天使「キーナ」は、このままではいけないと心を痛め、ハルに様々な「サイン」を送るのだが…。

テーマ

 ストーリーはわかりやすく、テーマも明快である。おおよそ次の通り。人間の創造性は情報の切り貼りではなく、本や自分の心との対話を通して得られるイマジネーションによって広がる。一方で現在も未来も人々はネット上のマスデータやAI技術と無関係ではいられない。だがデータに依存してはダメだ。自律する意識があれば共存できる。一人一人には生まれてきた意味がある。天使からの「サイン」に耳を傾け、自分の存在価値を見出そう。

感想その1(肯定論)

 出演者がプロ集団でないのは先刻承知なので、演技・歌唱・ダンスが高いレベルでなくても問題でない。むしろ予想よりだいぶ達者て驚いた。アマチュアならではの誠実さが伝わってきて、観客(出演者の知人や縁者が多いのだろう)の反応もやさしく暖かいものだった。全体的に好印象の持てる良い作品だったと思う。舞台美術はとても素敵なしつらえだった。7月にオープンする石川県の新県立図書館にもマッチする。そこでも公演が予定されており楽しみだ。楽曲は中田理恵子氏の真骨頂であり、全体にとても良い構成で美しい曲と歌が披露された。特に主役のキーナが歌った曲はVOX OF JOYのコンサートで何度も聞いたもので劇の内容にフィットしていたし、声質がとても澄んでいて素晴らしかった。中田氏はもっともっと曲を作るべきだ。作風はミュージカルに合っている。VOX OF JOYのレパートリーを増やせば、ミュージカルで使える曲の幅も増えることになる。そして、生演奏がバックで透けて見えるのが良い。もう少し高い場所ではっきり見せてもいい。中田氏が役者の呼吸に寄り添って奏でる様子が非常に格好よく、これを見せない手はない。

感想その2(残念論)

 残念に思った点もある。脚本、演出、役者、音楽、踊りの5要素に分けると、役者と音楽は上に書いたように○。演出は特に工夫はなくチャチャっとまとめた印象で△。踊りは振り付けに面白みやオリジナリティがなく×。冒頭、本はすばらしいと歌って踊る群舞では、役者達が本を両手で持って正面に突き出す。いやいや、本の世界のl魅力の表現ってそういうことじゃない。そして私が一番残念に感じたのが脚本だった。図書館が舞台であるべき必然性、読書とAIの対立軸、天使が送るサインの見せ方、どれもが弱い。ハルがキーナのサインを受けて覚醒する場面は一番の見せ場のはず。ミュージカルであるならば、一番の肝の部分は歌で表現するのが本道だ。なのに主人公は、目が覚めました、そしたら賞が取れました、チャンチャンで終わってしまっている。これでは説得力なし。原案のコンセプトはとても良いだけにもったいない。脚本をさらに練り上げ、改訂を繰り返すことによってもっと良い作品に進化できる。ピクサーならこの原案でアカデミー賞作品を作るだろう。未だ発展途上という期待を込めて苦言を呈したい。

青果物の週間情報 【2022-W6】

■週の概況 第6週 2/7(月)~ 2/12(土)

【全体】

 燃油や資材の高騰がニュースとなり、農産物の製造原価は間違いなく上がっているが、野菜は価格転嫁に結びつかず、消費も低調な動きが続いている。本来なら豆類など春の商材を売りたい時季だが、寒さ厳しく降雪も続き、需要はまだ高まっていない。野菜は全般的に冷え込みで数量は少なめながら、値を上げる品目は少なく、小康状態が続くだろう。ただ、長期的に高値だった馬鈴薯は、鹿児島県産が潤沢かつ大玉傾向のため、潮目が大きく変わってきそうだ。また、降雪により週の前半は交通網が乱れるかもしれない。

 果実は中晩柑類の種類が豊富で順調な入荷を見せているが、気候の影響で品種の出方が例年より早いサイクルで回っている。例えば本来3月が旬のはずの「はまさき」がすでに出回ってきたし、「せとか」の出方も早い。この傾向は他の果実にも波及すると考えられ、毎年のパターンとは違う売場展開が必要になる。イチゴは若干の数量不足で高値基調だったが、ゆるやかな増量を見せる。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、ブロッコリーやレタスが寒さの影響から減少し、高値推移が続く。白菜はピークが過ぎ減少へと向かい、値段は底上げとなる。反対にねぎは大分産を中心に潤沢な入荷となり平年並みの入荷となる。アスパラはメキシコ産を中心に潤沢に入り、価格は下がる見込み。

 果菜類では、トマト・ミニトマトは減少に伴い価格は底上げとなる。キセラインゲンは節分需要が落ち着き、値段は下げる。反対にピーマンは気温低下で減少し、値は上げ予想となる。

 根菜類では、大根は太物割合の少ない状況が続く。人参は重たい。かぶは増量。ごぼうは潤沢で前年と比較して安値となる。生姜は順調で安値感がある。季節商材では、鹿児島産の筍が入ってくる。

【果実】

 国内果実では、苺は前週と比較して微増となる。メロン類は、原油高の影響から静岡産の数量が減少する模様。熊本産の赤肉メロンが入荷中。キウイフルーツは和歌山産、愛媛産が中心だが、生育不良で数量は少ない。鹿児島産、宮崎産の金柑を入荷中。

 国外果実では、シトラス系は、グレープフルーツ、レモンが依然数量が少なく、高値維持となる。アボガドは前年並みながら冷害により価格は強保合となる。