青果物の週間情報 【2021-W36】

■週の概況 第36週 8/30(月)~ 9/4(金)

【全体】

 前週の当概況では「気温も朝晩下がり、秋向けの煮炊き商材が活発化…」と予想したが、見事にはずしてしまった。暑さがぶり返して逆戻りの様相だ。大根など加熱商材は消費にブレーキがかかり低調な動きになった。この週も湿度が高く蒸し暑い日が続きそうで、週の前半に〝野菜の日〟があるものの、やや重たい流れになる見込みだ。市況は、高騰していた品目(キュウリやなす、ブロッコリー等)が高値疲れで下げる一方、長雨等の影響で減少する品目(ミニトマトやピーマン等)が強気配となり、野菜全体のイメージは堅調な価格推移と映るだろう。
 果実では主力の梨がややだぶつき気味だ。幸水が終盤戦で週末には豊水へ切り替わる一方、加賀しずくは高単価ながら好調な動きを続ける。ブドウは大粒系がメインでシャインマスカットを中心に品種も豊富だが、ルビーロマンは生育段階で糖度がのってくるスピードが遅く、予定計画数量より減少傾向となる。イチジク、栗、グリーンハウスなど秋の果実が少しずつ増量となる。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、ブロッコリーは高値疲れから下げに転ずる見込みだ。天候不良に見舞われた長野産のレタス、白菜は徐々に品質が回復する。ほうれん草、小松菜は高温と曇天により県内産の入荷量が減少し、品薄が9月上旬まで続くだろう。
 果菜類では、胡瓜、茄子は高値疲れから、価格は下げに移る。反対にトマト、ミニトマト、ピーマンや豆類は産地の降雨や高温で数量の落ち込みを見せ価格の上昇となる。
 根菜類では、大根はメイン産地の北海道で数量の回復が見込まれる。人参も増量傾向にあるが、道内の産地では立ち枯れも見られ切り上がりが早まるだろう。青森産のかぶらは数量が安定せず、高値推移が続く。玉葱、ばれいしょも数量少なく、上げ模様だ。県内商材では、れんこん、甘藷は順調で、平年並みの入荷が見込まれる。月が変わりホットメニューへの移行や学校給食の需要等から、根菜類の引き合いが強まる。

【果実】

 国内果実では、前週よりスタートした加賀しずくが順調な入荷を見込む。県内各JAより豊水もスタートする。ルビーロマンは県内各JAから連日入荷するが、ピークも過ぎ数量は落ち着きを見せる。巨峰は長野産をメインに連日、安定した物量が見込まれる。シャインマスカットは山梨産がピークを迎え潤沢な入荷となるだろう。いちじくは愛知産、県内産が安定しているが、県内産は雨による品傷み、数量減少が懸念される。ハウスみかんは愛知産に加え佐賀産を入荷する。
 国外果実では、バナナの船舶の遅延が発生している。その他の品目については概ね安定した入荷で価格も保合が予想される。

来年の東京休市案にモノ申す

来年の休市検討の時期

 毎年、この頃から、来年の卸売市場の休開市をどうするかが問題になる。金沢市場のような地方の市場にとっては、独自に休市を設定することはできない。産地あっての市場であり、東京や大阪の大都市市場の開場日にこちらが合わせるしかない。東京や大阪が休みなのに、金沢だけが営業しても、全国の産地は〝はいそうですか〟と動いてはくれないのである。反対に東京や大阪が営業日なのに金沢だけが休むのも、販売チャンスロスになる。

奇妙な東京案

 そこで現時点での東京案を入手した。まだ確定ではないそうだが、かなりまとまってきたらしい。見て驚いた。例年と傾向が違う。完全週休二日制と銘打ち、一見、整然と日曜と水曜日を休市設定にしている。そのかわりに、祝日(旗日)を臨時開市という営業日に設定している…ことが多い(!)。

東京案では市場間、部門間がバラバラに

 この「…ことが多い(!)」が曲者だ。東京案にモノ申す。一年を通して一貫性がない。ある週は旗日を開市にして水曜を休みにしているくせに、別の週では旗日を休み水曜を開市にしている。しかもそれをするのは青果部門だけだ。よって青果と水産の両方を有する市場では、どちらか一方だけが休み、他方が営業するといういわゆる「片肺」が頻発している。これは、青果物と水産物を双方仕入れる食品業者(小売業者)には迷惑この上ないのだ。おそらく大阪方はこの東京案には同調すまい。独自に大阪案を設定すればまたしても東京と大阪はバラバラ。さらに東京は青果と水産もバラバラ。地方の市場にとっては何ともやりにくい進展になるのだ。

シンプルな休市設定を望む

 もし東京案が、一年を通してすべての祝日を臨時開市とし、すべての水曜を休みとするならば理解できる。理解どころか賛成だ。市場人としてはそれが一番有利と思う。わかりやすくシンプルであるし、メリハリもつく。生鮮青果物は時間とともに商品が劣化するので、もともと連休には馴染まないのだ。また、世間並みの休日確保を優先するなら、水曜完全休市に加え、祝日も休市とする案にも反対はしない。(ただし個人的には休みが多すぎると思っている。今の日本の社会は休みすぎだ。日本人の気質にはそぐわない。)東京案は中途半端で良くない。

ルビーロマン韓国に流出⁉️

国外流出の新聞報道

 石川県だけで生産されているはずの特産品「ルビーロマン」が韓国でも栽培され、流通しているとの報道が伝わってくる。新聞には韓国の大手百貨店で販売されたルビーロマンの写真が掲載されている。本物か偽物かは不明だが、写真を見る限りは本物にきわめて近い。

苗木が持ち出された?

 ルビーロマンは石川県のぶどう農家ならば自由に栽培可能であるが、ブランドの権利保護のため、苗木の県外流出は禁止されている。もしも韓国のものが本物ならば、苗木が不正に流出したことになる。苗木管理は石川県農林水産部が担当しているが、現時点の調査では、海外流出の事実は確認されていないという。

偽物説も有力

 今のところは〝偽物説〟がやや有力だ。根拠は、ルビーロマンは栽培が極めて難しく、秀品に仕上げるにかなりの技術を要するためだ。少しでも水のやり方を間違えると実が割れてしまう。石川では1粒でも実割れが起こると正品にならない。だから、たとえ苗木が何らかの不正により韓国に流出したとしても、現地で正品レベルに仕上げるのは不可能だという見解だ。だが、実際にモノを確認して調べなければ真偽のほどはわからない。ところが今はコロナ禍で簡単に韓国に行くこともままならない。そんなこんなで疑惑・憶測ばかりが飛び交っているのである。

当方にも問い合わせが

 私のところにも石川県庁の農林水産部生産流通課から問い合わせがあった。日本と韓国の青果物流通に詳しい人を紹介してもらえないか、というものだった。2国間での野菜や果物の売り買いは、主に専門商社が行っている。特に、韓国産の農産物と言えばパプリカがメインだ。当社でも韓国産パプリカは一年中扱っており、その輸入商社を紹介した。

真相究明は必須

 海外への不正な種苗流出はいろいろな品目で疑惑がある。数年前、ピョンチャンオリンピックでカーリング女子日本代表が「もぐもぐタイム」と称して韓国産イチゴをおいしそうにほおばっていたのが話題になった。あのイチゴも日本の大粒品種の苗が流出したものとのことだ。種苗は開発者の極めて重大な財産であり、無断転用はもってのほかの権利である。真相は絶対に突き止め、しかるべき防衛策を取らなければならない。長い年月をかけて編み出した血と汗の結晶を安易に盗用されてはならない。

パラリンピック開幕!そして意義について考える

東京パラリンピックが8月24日に開幕

 東京五輪に続き、8月24日(火曜日)、東京2020パラリンピックが開幕した。24日に開会式、そして25日から各競技が始まった。9月5日までの12日間に22競技539種目、参加国161ヵ国、選手数4400人規模で熱戦が繰り広げられる。これはロンドンに続く過去2番目の多さだ。日本代表選手は約250人である。

多様な闘い方に感動

 競技を見て驚嘆する。障害は各人様々である。足がない人、手がない人…。障害の重度数を合わせるとはいえ、まったく均一でない障害を抱える人々が、同じ舞台で技と力を競う。だから例えば水泳では泳法が競技者によってバラバラである。両足・両手がない選手が体をくねらせて泳ぐ。人間の独創性、可能性、ブレークスルーへの意欲はかくも凄まじいものか。人とはかくも強くなれるのか。

パラリンピック開催の意義

 生まれつき障害があった選手、生誕後に事故や病気で障害を抱えるに至った選手、その経緯はさまざまである。失意、絶望、諦念を乗り越えてアスリートの道を歩み始めた人々が多いことだろう。選手にとってパラリンピックを目指すことは生きている証である。ならば、いくらコロナで大変な世であろうが、大会を中止することは彼らの人生の少なくとも4年間を奪うことになりはしないか。本大会、ぜひとも感染拡大を最小限に止め、最後までやり切っていただきたい。

学校連携観戦プログラムには賛成

 ウイルス感染対策で全21会場が原則無観客となる。しかし自治体や学校が希望すれば「学校連携観戦プログラム」が実施され、学生が観戦することができる。これについては賛成派、反対派で激しい議論があった。私は賛成だ。観れば必ず若者たちの感性に触れる。人の多様性、可能性、平等、不平等、克己、生命、人の価値…etc.
 人の世は残酷なほどに不平等である。だがそれを嘆き悲しみ恨むのではなく、不平等を受けとめたうえで自身はどう生きるかを見つめる。その絶好の機会がパラリンピックにはある。我が子を外に出すのに不安を感じるのは親として当然だが、世話をする関係者、学校の先生方を信じ、送り出すべきだと思う。

社員の感染と自己の抗体検査

新たに2名の社員が感染

 この一週間で、社員から陽性反応者が二名出た。両名とも同じ場所に勤務しており、最初に判明した方は感染経路不明、後で判明した方は先者からウイルスをもらったと考えられる。二人の勤務地は卸売場や事務所とはまったく離れた場所であり、本社社員への感染拡大の恐れはない。また、二人に近い場所で勤務する社員にすぐさまPCR検査を施した。幸いにしてその者は陰性とわかり、通常勤務に戻っている。

恐るべしデルタ株

 デルタ株の感染力はざっくり言って従来のウイルスの1000倍とのことだ。マスク着用でもすり抜けてしまう。もう誰がいつ感染してもおかしくない。明日は我が身であり、もちろん、感染した者は不当に差別されたり非難を受けたりする筋合いではない。ワクチンは数か月経つと抗体が数分の一に減退してしまうという恐ろしい研究結果が発表された。もし、免疫力がなくなってしまうのならば、ウイルスとの闘いはいつまで続くのだろうか。

全社で検査

 これを機に、コロナ対策として我が社では全社員に抗体検査を施した。私も初めて抗体検査を受けた。これまた幸いにして、私を含め全員が陰性であった。これはもちろん現時点での結果であり、今後の安全を保障するものではない。また、簡易キットによる抗体検査であるから、陰性で100%間違いないというお墨付きは得られない。不確実さは、小まめに検査を続けることで補っていくつもりだ。感染被害を最小限に止める努力をしなければならない。

更なる感染対策

 また、市場の開設者は、卸売場に何か所も非接触型の体温測定器と消毒液を設置した。当社も独自に機材を購入する予定である。在宅リモート勤務も可能性を探っていく。一部所にまとめて数人が感染すると、業務が回らなくなる。チーム内で、時間と距離の間隔を空けながら、各社員間で業務の共有するような工夫が求められる。

「加賀しずく」の初出荷

10万円の値がついた桐箱のなしをかざす瀬戸会長

加賀しずくの本年産スタート

 本日、石川県産の梨のオリジナルブランド「加賀しずく」の本年初せりが行われました。石川県の農業試験場が開発した品種で、他県では一切作られていません。石川県だけ、しかも加賀地方だけの産物です。

加賀しずくの由来

 豊水の後継品種にしようと、石川県農林総合研究センターが開発を始めたのが1998年。いくつもの系統から選抜した選りすぐりのものを2014年に品種登録申請しました。2016年に名称を「加賀しずく」に決定、2017年に市場デビューしました。

加賀しずくの特徴

 名前のとおり、石川県の加賀地方の特産品です。生産地は金沢市、加賀市、白山市です。最大の特徴は大きさ。平均的な重さは1個600gで、幸水の1.5倍あります。収穫時期は8月下旬から9月中旬であり、全国的に栽培されている「豊水」と出荷時期が重なりますが、豊水よりも高単価が見込まれるため、石川県では作付けの転換が推奨されています。食味は酸味が少なく、まろやかな甘みです。

注目の初せりの価格

 初せりのこの日、597ケースもの入荷がありました。栽培技術の向上と樹の成長による生産量の増大です。今季は昨年12トンの倍である25トンの出荷を見込んでいます。そして注目の価格は、最もグレードの高かった6玉を桐箱に入れた品が1ケース10万円で落とされました。これは昨年と同額の価格で、青果専門商の株式会社堀他さんが初出荷のご祝儀としてつけて下さった価格です。

高い梨ではあるが、、、

 10万円が高いか安いかといえば、もちろん高いに決まっています。実際に自分で食べる梨に10万円も出す人はまずいないでしょう。ですが普通にスーパーで買える梨の2~3倍ならば、それなりの価値さえ見いだせれば買って食べてみようという人はいます。ターゲットはまさに、〝こだわりの梨を食べたい〟消費者層です。8月下旬から9月は、梨そのものに少し飽きてくるころ。ならば、普通の梨ではなく、グレードの高いものを提供しようというコンセプトで産まれたのが加賀しずくであるといえるでしょう。これは、規模は小さいが優秀な技術を擁する石川県の農業にマッチした戦略です。加賀しずくが今後さらに発展するためには、〝良いもの〟であり続けることが一番重要だと思います。

新潟市中央卸売市場へ行く

新潟出張

 今日、仕事で新潟市場まで行ってきた。久しぶりの出張だ。今は金沢市場にクラスターが出ている現状であり、遠出は遠慮した方がよいかとも思ったが、先方は快く受け入れてくださった。

市場の相違点

 中央卸売市場は全国に配置されている。どこでも似たようなものとも言えるし、市場によって随分違うとも言える。そこで働く卸売会社も、全国どこでも似たような働きぶりとも言えるし、かなり中身に差があるとも言える。新潟の市場を歩いて改めてそう思った。新潟が金沢よりも優れている点は多々ある。

広い面積

 新潟は敷地面積が広大だ。市場敷地の中に卸売会社の子会社、仲卸の子会社、工場、小売店の惣菜センター、一般市民への販売施設などがそろっている。売場そのものも広い。卸売市場は物を動かすところだから、〝広さは力〟だ。今金沢市場は再整備計画において現状面積をさらに縮小する方向だ。私は新潟のこの広さがうらやましい。

産地背景の違い

 取り扱っている青果物の産地背景がかなり違う。新潟は産地市場なので、新潟産の農産物が目立つのは当然のことだ。特に野菜では茶豆の特産地であり、5キロ袋など産地ならではの規格も面白い。また、新潟には食用花をバクバク食べる食文化があり、「かきのもと」という紫の食用花が大量にあるのはびっくりした。

市場間協力

 金沢と新潟は北陸の括りで一緒にされる時もあるが、地元の人間からすれば風土も文化もまったく違う。電車であろうが車であろうが行き来するには3時間以上かかり、金沢人からすれば、新潟より東京の方が移動時間が少なく近い気がする。だから普段の商売でもそれほど交流がないのが実態だ。しかし、これからの卸売市場はもっと市場間協力というものを進めるべきかもしれない。そこには今まで知らなかった世界が少なからずあるからだ。

青果物の週間情報 【2021-W35】

■週の概況 第35週 8/23(月)~ 8/28(金)

【全体】

 猛暑による高温干ばつ、そして前週までの大雨・長雨で野菜の生育には大きく負荷がかかっており、生産状況は一転。今後は品薄の品目が多くなり、野菜の相場は安値低迷から抜け出す方向にある。いち早く反応し、前週に価格を大きく跳ね上げたのはキュウリだが、今後は他の野菜も追随するように強気配となるだろう。8月31日の〝野菜の日〟をめがけ、各小売店で企画が入っているので、特にこの週は値動きに注意が必要だ。ただ、まん防措置の延長で業務用・外食向け商材は依然として厳しい環境が続く。
 消費面でも変化が見られる。朝晩が涼しくなり、煮炊き商材への関心が高まってきた。特に大根、人参の動きが良くなっている。さつまいもの引き合いも好調で、加賀野菜の五郎島金時の出荷開始と相まって良好な販売環境になりそう。反対に生姜やサラダ野菜など暑さで需要が高まる品目は、やや鈍くなるようだ。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、ブロッコリーは高値疲れから下げ基調に転じる。反対に、レタス、白菜は産地での調整が入り、数量少なくこちらは上げ基調となる見込みだ。
 果菜類では、胡瓜は、天候は安定してきたが、数量の回復までには至らず堅調な価格推移となる模様。太胡瓜は終盤に差し掛かり減少傾向に向かう。とうもろこしは北海道の高温、干ばつにより不安定な入荷となり注意が必要だ。
 根菜類では、大根は徐々に入荷量の回復が見込まれる。人参は少なかった太物が増加する見込みだが、引き合いは強く価格は上げです。青森産のかぶらは降雨と台風の影響から大幅な入荷量の減少となり、翌週以降も数量と価格動向には注意が必だ。ばれいしょ、玉ねぎは依然として小玉傾向が続き東北以北の産地状況は、厳しい見込みである。県内商材では、れんこんは順調な入荷が見込まれる。21日(土)よりスタートした甘藷は不作だった前年と比較して、順調な入荷となるだろう。

【果実】

 国内果実では、梨は加賀しずくの入荷がスタートする。県内産の幸水は今月いっぱいがめどとなる。ルビーロマンは安定した入荷が続く。ぶどう類では、シャインマスカットは山梨産主体となり安定した数量となる。巨峰は山梨産に加え、長野産の入荷。長野産は先般の降雨の被害もなく安定した物量が見込まれる。メロンは静岡産、北海道産が中心だが、静岡産は高温から大玉傾向と正品率の低下が見られる。北海道産は安定した入荷となり、価格は下げ基調となるだろう。
 国外果実では、キウイフルーツはゴールド系の大玉サイズに不足感が出る。

五郎島金時の酒栄部会長

加賀野菜「五郎島金時」の初せり

 本日、加賀野菜の4番バッター的存在、JA金沢市のさつまいもの販売が始まった。金沢市の粟崎(あわがさき)・五郎島・大野の砂丘地で農業を営む39戸の生産者から生み出されるさつまいもがいわゆる「五郎島金時」だ。今から10月までは掘りたてを出荷。それ以降はキュアリング貯蔵という特殊貯蔵技術によって来年5月まで長期出荷となる。

ルーツを示す〝ちょんまげ姿〟

 初せりにあたり、JA金沢市五郎島さつまいも部会の酒栄(さかえ)優次部会長が〝ちょんまげ姿〟のかつらをかぶって登場された。部会長の名誉のために説明するが、これは決して悪ふざけではない。五郎島金時の発祥は、元禄年間に五郎島村の太郎右衛門(たろうえもん)が薩摩から種芋を持ち帰ったことに由来する。その際、関所を通るのに種芋をちょんまげに隠したとの逸話がある。ちょんまげ部分に茶色く見えるのは、さつまいもだ。このかつらは酒栄部会長手作りの作で、五郎島金時のルーツをこの〝ヅラ〟一発で示すものであり、〝初心に帰れ!〟というメッセージを込めたものである!!…との部会長の説明だった。が、見ればどうしても笑いがこみ上げてしまう。いやいやだからこそ面白い。ユーモアと心意気は並び立つのだ。

山野市長連投。〝こんな時だからこそ!〟

 昨日の金沢トマト初荷に続き、本日も山野市長が来場された。そしてこれまた昨日同様、〝こんな時だからこそ、安全安心でおいしい金沢の食を市場から発信していこう!〟と力強く宣言された。

酒栄部会長のユーモア精神

 酒栄部会長はさらに「キンメダルはかじっちゃだめだけど、キントキは大いにかじってほしい!」と、某炎上市長をパロッて五郎島金時を山野市長にかじってくれと強要(笑)。山野市長は「こんなことして大丈夫かな」と苦笑いを浮かべ大いに弱りながらも口元にさつまいもを持っていかれた。酒栄さんはユーモア精神溢れる方だ。しかもハートが熱い。さつまいもの販売環境が悪い時は、どうすれば価格が維持されるか、どう展開すれば部会員をまとめあげられるかを常に市場側と膝詰めで相談に来られる。難しい時代にはユーモアとパッションを両方持ち合わせるリーダーが必要だ。市場側もその思いにしっかりと応えなければならない。

金沢トマトと金沢市長

金沢トマトの初出荷

 本日、JA金沢市のトマトの初荷を迎えた。金沢市打木・安原産の抑制トマトは毎年8月下旬から始まる。11月下旬までがシーズンだ。抑制とは普通の露地栽培より作付けを遅らせ、夏野菜を秋に収穫出来るよう栽培するものだ。秋のトマトはみずみずしく、さわやかな酸味を楽しめる。また、JA金沢市のトマトは「金沢そだち」というブランド名で農協が特に力を入れている品目でもある。

山野市長来場

 本日は初荷初売りの日だが、生産者の方々は市場にいらっしゃらなかった。コロナ禍で、ご来訪を控えられたのだ。少し寂しいが仕方ないことである。だが、山野之義(ゆきよし)金沢市長は朝5時20分に売場にいらっしゃった。そして5時30分の販売開始時には、高らかにご挨拶までしてくださった。「こんな時だからこそ!おいしい金沢産トマトをみなで盛り上げて販売していきましょう!」と。

〝こんな時だからこそ〟

 金沢市場は水産売場でクラスターが出ている。全国ニュースにもなり、人々に対し、食の安全安心に不安を持たせてしまった。市長は先日、金沢市場感染対策を緊急で発令した。そんな事態だからこそ出た言葉〝こんな時だからこそ〟だ。実は、ここまで深刻になる前も、地物の農産物が始まるごとに、山野市長はよく市場に来られていた。だがコロナ禍で派手なパフォーマンスは控えるべきだろうと、静かに見守るに留めてこられた。それが今回は転換した。この危機を市場全員で乗り越えよう!ご挨拶に込められていたのは、市場関係者に向けたエールだった。この時、売場には青果関係者だけでなく、水産の卸社長、仲卸組合理事長も来られていた。われわれ市場人は〝こんな時だからこそ〟一丸となって市場の安全性を確保しなければならない。