明暗分かれたGW

GW中は人出は◎

 GWの3連休が明けた。連休が明けて、ものの動き、売れ行きはどうだったか各業者さんにリサーチした。私は3連休にいろいろな場所に出向いたが、街中は観光客でどこも大変な人出だった。これがそのまま売上に直結してくれればいいのだが…。

業務◎、一般小売×

 聞くと完全に明暗が分かれていた。いわゆる業務筋は◎で、普通の小売店は×である。業務筋とは食べ物屋さん及びそこに材料を納品する業者さんを指す。金沢にはコロナ前に匹敵する多くの観光客が訪れ、外食産業は活況を呈した。近江町市場は市民の台所でありながら観光客の人気も高い。人気の回転ずし店の前を車で通ると、百メートルはあるかと思われる行列ができていた。列をなして買うわけではなく、店内で食べる人の順番待ちだ。この人たちはわざわざ金沢まで観光に来たのに、この順番待ちで何時間を費やすのだろう、と不思議に思った。

観光客対応◎、一般家庭対応×

 近江町のある果物屋さんは、お店でオレンジジュースを絞って販売し、それが観光客によく売れて売上を伸ばした。一方、普通に果物を販売する専門商さんは、観光客の波で逆に馴染みのお客さんが来られず、〝商売にならん〟と4日と5日はお店を開かなかったとのことだ。スーパーさんに聞いても「人々の目は外ばかりに向いていて内食向けのスーパーはさっぱりです」との答えだった。

外食産業に注力で◎

 そして、業務筋への納め業も自社店舗営業も両方こなすHという会社の方は〝業務筋からの注文がひっきりなしだったので店を閉めて外食産業への納入に専念した〟とのこと。賢い。これが一番効率的なGWの商売の仕方だったのかもしれない。 

わが社社員はみなご苦労さん◎

 GW中は〝休日対応〟といって、市場は休みだが特別に産地に出荷を要請して荷物を引く仕事がある。連休中の特需対応に社員が備えるわけだ。働く時間は1~2時間程度だが、せっかくの休みの中、市場に出てこなくてはならない。担当社員のご苦労には頭が下がる。

大加州刀展の刀剣女子パワー

加州刀の展示会

 石川県立歴史博物館で開催中の「大加州刀展」に行ってきた。「加州刀」とは加賀の地で打たれた刀剣を指す。室町時代から加賀では数多くの優れた刀匠が活躍し、江戸時代には加賀藩の保護を受けて全盛期を迎えた。令和3年度の夏季に特別展が開催される予定だったが、新型コロナのため短期で中止になり、今年改めて開催されたものだ。

刀剣乱舞とのコラボ企画

 今回の目玉は人気ゲーム・アニメの「刀剣乱舞」とのコラボレーションである。場内には「刀剣男士 加州清光」等身大パネルが設置され、グッズ販売、描き下ろしイラスト、アニメ声優による音声ガイドなど、古臭い日本刀展示会とは一線を画すキャピキャピの要素てんこ盛りである。

刀剣女子!

 私はその世界をま~ったく知らない。一つは日本刀を愛でる世界、一つは「刀剣乱舞」の世界、両方である。博物館が家から歩いて5分ちょっとのところだから、何気なく入ってみただけなのだ。日本刀の世界ってのも奥が深いんだろうなぁ~という物見遊山だった。そして入館してぶったまげたのである。若い女性でいっぱいだ!!皆、スマホを片手に日本刀に見入っている。眼差しは真剣そのものだ(シャレではない)。彼女たちを「刀剣女子」と呼ぶことを後で知った。

歴女の経済波及効果恐るべし

 刀剣女子はいわゆる「歴女(れきじょ)」の一種なのだろうか。歴女、仏像女子、城ガール、武将萌え、そして刀剣女子。SNSやゲームという媒体を経て、コアな女性ファンを獲得して新しい流行を生み出している。新商品の開発や観光産業への貢献など、その経済効果はものすごい。

日本刀の魅力

 肝心の日本刀自体とても魅力的に感じた。実は我が家には「備前長船兼光」がある。私の祖父が手に入れたものだ。数回見たことがあるが、その時は興味がなく、納戸にしまいっぱなしになっている。展示室で観る刀の数々はまぎれもなく芸術品。しかも日本固有の文化である。これを機に深く勉強したいと思った。これもすべて刀剣女子のおかげである。

映画レビュー:ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス

公開初日の10時に鑑賞

 生まれて初めて公開初日の映画を観た。別にそれほど楽しみにしていたわけではないが、丁度GWで何もなく、タイミングが良かった。人気映画でお休みといえば、私が子供の頃ならば映画館は立ち見だった。スピルバーグのジョーズを思い出す。本日はどうだったか。席数で言えば約3割の入りだった。昔よりはるかに映画館が多いせいもあるが、GWという大型連休における人気作の初日でもこんなものだ。ネット配信は映画のスタイルをすっかり変えてしまった。

4DX3Dで寝落ち防止

 本日は、4DX3Dを選んだ。実は睡眠不足で、普通の2Dで寝てしまうことを恐れた。結果は大正解だった。開始後1時間ごろに激しい睡魔に襲われた。ド派手CG満載のアクション映画で刺激が常に強いのだが、かなり眠気はきつかった。その都度、動き回る席に救われた。

前半は正直退屈

 正直、前半は退屈した。ド派手慣れ、マーベル慣れだ。ストーリーはわかったようなわからんような。一応、映画版のマーベルは全作観ている私だが、今ここはどこ?あれは誰?ここでそれするとあちらでどうなるの?など、人に解説できるほど理解していない。劇場にはたくさんの子供連れが来ていたが、まったくチンプンカンプンだろう。終わって調べると、ワンダのストーリーはディズニー+で配信された『ワンダヴィジョン』からつながっているようだ。そんなん観てないし。このシリーズの一見さんお断り状態は、ますますひどくなっている。

マルチバースは命を軽んじる?

 だが、後半は面白く観た。キャプテン・カーター登場。この女優さんは好きだが、すぐに死んでしまった。そしてプロフェ…登場!噂は本当だった。だがやはり死んでしまう。すぐに死なせるのはマルチバース設定の悪いところではないか。他の世界では生きているからこの世界では死んでもいいのだ。しかし、これは思い入れてきたスーパーヒーローの像を貶めるものである。前作スパイダーマンがヴィランまでをも殺めなかったのとはえらい違いである。それだけワンダがとんでもなくつええ…ということを表現したかったのかもしれないが。

子供にトラウマのホラー映画

 そして、ホラー映画の要素を取り入れたあたりはさすがサム・ライミ。オルセンはいかにもホラー向きの女優だ。ワンダの表情はキャリーを思い出させた。劇場に来た子供達はとんでもないトラウマを植え付けられたことだろう。ストーリーはわけがわからず、観たくもないお化けを見せられ、踏んだり蹴ったりのGWとなったことだろう。スティーブのゾンビ化はギャグで笑うところなんだが、子供には無理だ。

マーベルはますますマニアック化

 シリーズの設定はいよいよ複雑となり、鑑賞のハードルはますます高い。しかしマーベルは完全に開き直っていて、ますますマニアックになっていくと思われる。今後の世界観にはX…、ファンタ…が参入する。ウル…もそのうち出てくるだろう。展開はとても楽しみである。今後の理解のためにはディズニー+の視聴が必須かもしれない。まんまとディズニーやマーベルの戦略に乗ってしまうことになるのだが。

2台目キンドルと1台目の復活

2台目購入

 電子書籍を読む専門機であるキンドルの2台目を購入した。Kindle Paper Whiteだ。7月の大セールまで待とうかと思っていたが、読書時間(私にとっては入浴中)が確保できず、数千円をケチって待つものではないと判断した。

風呂場で読書

 1台目はフリーズしたままウントもスンとも動かなくなってしまったのである。1台目はほぼ1年にわたって、とても重宝した。風呂の時間がとても有意義だった。Kindle Paper Whiteは防水が売りである。睡眠の質向上には15分間湯につかり、体の芯温を高めるのがいいと知った。しかし何もせずに15分間耐えるのは暑がりの私には拷問に近い。そこでその時間を読書に当てることにした。普段から本を読む時間が少なかったので一石二鳥であった。

2台目の進化

 調べてみると1台目の購入は4月末だった。もしかしてアマゾンの保証期間中?とか後になっていろいろ思うことがあったが、もう2台目を買ってしまったのだから要らぬことは考えないことにする。2台目は、マイナーチェンジがいくつかある。画面の色調が変えられること、電源端子がCタイプになったこと(これは良い!)など。大きさが微妙に大きくなって、ページめくりが早くなった。

1台目の復活

 奇妙なことが起きた。1台目がまた動くようになったのである。なぜ今どうして??もっと早くに復活していれば、1万5000円を出す必要はなかったのに。なんとなく、2台目が来てからシンクロして1台目が目を覚ましたような印象だ。液晶の中のランプも半分切れて真っ暗に近かったが、なんだか明るくなったような気がする。2台目から電波が出て、それがエネルギーになって蘇生したかのような。ウルトラマンが怪獣に破れて一度死に、兄弟が助けに来てエネルギー光線を注入されて生き返る話があったような。

キンドル2台持ち

 せっかくだから、風呂場専用と持ち歩き用で分けて使うか。携帯2代持ち、PC2台持ちの人は珍しくないが、キンドル2台持ちはそんなにいないかもしれない。

業務大爆発!?

幸せを呼ぶ〝何もないGW〟

 3年ぶりに何もないGWだ。何もないことがこれほど幸せなことだとは、それ以前の時代、誰がわかっていただろう。もちろん「何もない」とは、コロナによる移動自粛、イベント中止、営業縮小などが「ない」ということを指す。コロナウイルスの感染自体は決して終息していない。金沢は今でも毎日数百人が罹患している。それでも、緊急事態宣言だのまん坊などは発令されず、三密を回避すれば、一通り何をやってもよい状況だ。

業務注文は一気に10倍

 金沢の観光名所の人だかりはものすごい。東山、兼六園、近江町市場…。盆暮れ正月に匹敵するほどの人混みだ。ホテルはどこも満杯だという。青果物の引き合いはどうかというと、スーパーマーケットなど一般消費者向けの小売店はパッとしないものの、業務筋の引き合いが爆発している。オーダーは平時の10倍だ。人々は様子を見ながらの活動だったので、実はこのオーダーが巻き起こったのはつい1,2日前のことだ。いきなりドカンと「明日●百箱をくれ」との注文である。おいおい、いくらなんでも極端すぎる。工業製品のようにストックできるものではない。あまりに急すぎる大量オーダーには対応が追いつかないのが青果物の宿命だ。このGWは多くの品目でいわゆるチャンスロスが起こった。

この後も一定レベルの維持を願う

 それでも、金沢という地は他の街よりも恵まれていると感謝せねばなるまい。普通の地方の街ではここまで流行るまい。今までどん底を這い回っていたのだ。せめて今くらいは湧いた湧いたに浮かれてもバチは当たるまい。そして、コロナというものが、撲滅はできなくともそれほど驚異でなくなり、経済活動が粛々と営み続けられる世に定着してもらいたい。この業務大爆発はいつか終わるのだが、その後もある程度のレベルで維持されることを切に願う。

青果物の週間情報 【2022-W18】

■週の概況 第18週 5/2(月)~ 5/7(土)

【全体】

 ゴールデンウィークに突入し卸売市場は3日~5日は3連休である。3年ぶりに移動制限のないGWとなり、当地は観光客・地元民で街中がごった返すことが予想される。特に業務筋は悪夢の2年間に比べればグッと好調だ。コロナ前のレベルには届かずとも、かなりの活況は期待できる。対して一般小売はおとなしめの雰囲気だ。すごもり需要はもはや過去の遺物。例年ならば連休直前は暴れる品目が出るものだが、今季は玉ねぎ以外はごくごく落ち着いている。今だぶついて安値低迷する品目も見当たらないかわり、高値ひっ迫するものもなし。九州・太平洋側の大雨で出荷にトラブルが若干出ていても、消費が穏やかなため、大騒ぎしている者はいない。
 GWは全国的に好天が見込まれるため、明けてからは一気に増量し、市況を下向きに押す可能性がある。経験がないほど寒さに震えたGW前だったが、GW後半からは気温も上がって、生産・消費とも大きく転換しそうだ。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、ブロッコリーは降雨により週後半にかけ減少が予想される。レタス・白菜・キャベツも曇雨天の影響で減少し、数量確保に注意が必要です。葱は大分産が端境期に入り、単価は上げる見込みだ。菌茸類は冷え込みで減少し、連休に入って堅調な価格推移が予想される。大葉や茗荷は潤沢な入荷と連休需要の落ち着きから単価は下がるだろう。
 果菜類では、胡瓜は前年をやや下回る数量だが、週後半にかけて増量する。茄子は連休前に需要が高まってきて強保合の展開。トマトは増加に伴い価格は下げに向かうが、前年より高値推移となるだろう。季節商材として県内産のこごみ等山菜類は潤沢だ。
 根菜類では、人参は連休明けより増量する。玉葱は愛知産が加わるものの高値推移が続く。反対に馬鈴薯は前年より単価安となるだろう。県内産の筍は肥大化も進み順調な入荷から、前年より安値での流通が見込まれる。

【果実】

 国内果実では、桜桃の入荷は前年より遅れ気味ながら徐々に増加する見込み。熊本産の西瓜は生育状況も安定し、週後半にかけて増量が期待される。マンゴーは宮崎産メインの入荷で母の日需要から堅調な価格推移が予想される。愛知産のハウスみかんや長崎産の枇杷が入ってきている。
 国外果実では、バナナは船舶の遅れから国内で不足感が漂い、価格は高値での推移が続く。シトラス系は全般的に数量減の単価高の状況が続く。ぶどうはチリ産を主体に潤沢な入荷。パイナップルは台湾産が前年と比較して安定した数量と、単価安となる見込みである。アメリカンチェリーがスタートし、次第に増量を見せる。

カーネギーの逸話

 鉄鋼王として有名なアメリカの実業家、アンドリュー・カーネギーに次のような逸話がある。大変おもしろい話なので記録しておく。

自殺直前!

 彼にも多くの悩みがあった。政治家からの圧力で会社が危機にある。不倫相手の女性が子供を認知するよう言ってきた。親戚が問題を起こしてばかりでその後始末をしなければならない、甥が警察沙汰の事件を起こし身柄の引き取りにいかねばならない、妻から今夜食事に連れて行かないと離婚すると言われた…。もう限界と思ったカーネギーは自殺を決意した。拳銃を取り出して思った。遺書を書いてから死なねば。説得力ある遺書にするには、自分の悩みをありたけぶちまけよう。カーネギーは黄色い便箋と鉛筆を取り出し、思いつくままに悩みを書き出し始めた。

悩みの数は予想の1/10

 彼自身、思った。仕事に家庭に…悩みはおそらく数百、いや、1000もあるに違いない。ところが、書き出してみるといくら頑張っても約70個しか思いつかなかった。あれ?思っていたよりもだいぶ少ない。そうか、悩みは無数にあると思っていたが、数十個がグルグルと頭をいつも巡っていたために思考が常にパンクしそうになっていたのだ。

4つに分類。そして…

 そしてカーネギーは書き出した問題点を4つに分類してみた。
1.明日解決できること
2.来週以降に解決できること
3.来月以降でも大丈夫なこと
4.解決できないこと
彼は4番目の解決できないことの問題はすっきりと諦め、残り3つを机にしまってそのまま彼は奥さんと夕食へと出かけた。その時には彼の頭から自殺をしようという気持ちはすっかり消え失せていた。

悩みと向き合い対処する手法

 この逸話には誰しもが抱える「悩み」というものの本質と対処法が記されている。人の脳は実はそれほどキャパがあるわけではなく、ほんの限られた問題によって支配され、堂々巡りに陥ってしまう。これがいわゆる「いっぱいいっぱい」の状態で、何も手につかなくなるがいつまでも悩みが解決しない状態だ。頭の中だけで処理をしようとしても埒が明かない。そこで頭の中身を紙に書き出してしまう。書き出してみると、それが思っていたよりはるかに容量が小さいことがしれてくる。ここで初めて悩みの正体があらわになり、実はそれほど恐ろしいモンスターではなかったのだと思い至る。そして、解決できる問題から一つずつ着手していけば多くはかたがつく、となるのだ。紙に思考をぶちまけること。これはぜひこれから身につけたい自己管理手法である。

考えないから段取りがいい

家事やるオヤジ

 故あって、家のことをあれこれやっている。ご飯を作ったり選択したり風呂を用意したり。いわゆる家事というのは今までそんなにやったことがなかったし、もちろん元々私は手際がいいわけでも知識が豊富であるわけでもない。一つ一つのやり方は妻から色々教わりながらやっている。

段取りが良くなった自分

 1日という限られた時間の中で、今までやってこなかった家事の諸々をボンとはめなければならない。これはMAYではないしSHOULDでもない。MUST(マスト)だ。MUSTの中でやっていると、いつの間にか無茶苦茶段取りが良くなっている自分を発見できる。やはり人間は追い込まれ、否応なしの環境におかれるとそれなりにやるものだ。

考えないで決めてしまう

 時間内にこなすため、また、頭と体がそれで疲れることのないようにするため、自然と身につけたことがある。それは「なるべく考えない」ことだ。決められるものは決めてしまって何も考えないようにする。例えば、選択は日曜と水曜の会社が休みの時いすると決めた。今日は洗濯物が溜まっていないから明日にしよう、食器洗い機はもう少し食器が溜まってからスイッチを入れよう、今日の夕飯のおかずは2品作って2品を惣菜売場で買おう…これらみんなペケである。選択もがたまっていようがいまいが、水曜と日曜になったら絶対に選択するのだ。たとえパンツ1枚だけでも。食器洗い機もどんなに食器が少なかろうが食事後には必ずかけるんだ。ガラガラだからもったいないなんて絶対に思わない。決めてしまう。これをやりだしてから、段取りが良くなった。余計なことを考えずに行動することで一つ一つの仕事が異様に早く終る。これは会社でも応用できそうだ。下手に分析しないで、とにかく定番の仕事をやってしまう。パターン化する。それで前にすすむのだからそれで良い。

下手な考えよりは即行動

 人間は余計なことを考えるから疲れたしまったり、生産性がガクンと落ちてしまったりするのだ。腰を落ち着けて思索にふけることも必要だが、それ以外はさっさと手をつけて片付けてしまうに如くはなしだ。考えている暇があったら動いてやっつけてしまえということである。結果的にはこれが成しえる仕事の量を劇的に増やす。下手な考え休みに似たりだ。

青果物はもっと高くあらねばならない

農家の悲鳴

 産地は悲鳴を上げている。最近、生産者・出荷団体から聞こえてくるのは「燃油が高い、資材が高い、生産コストが上がっている、だからなんとか高値で販売してくれ」という声ばかりである。

農産物の製造原価

 加工食品がどんどん値上がりしているのに、生鮮青果物はそうではないという問題については、2月23日のブログにも書いた。「製造原価は工業の世界の話であって、農業には関係がない」。もしそんな考えがあるのだとしたら、それはとんでもない勘違いだ。種にも肥料にも水にもトラクターにも費用は厳然とかかっている。ハウスを加温するには油を燃やす。人件費も大きい。農産物には製造原価があり、それを下回れば農家は作り続けることができなくなる。

我慢にも限界あり

 〝農家は我慢してくれる〟という誤解もあるのではないか。実際、各地各品目で作付け面積は減っている。担い手が少なくなっている。合わないのでもうやめた、という事例は枚挙にいとまがないのだ。

高く売って…、無理だろうけど

 先日もある野菜の初出荷初セリがあった。生産者代表と農協関係者が来場され、せりに立ち会われた。せり前に部会長が「なんとか高くお願いします」とご挨拶された。農協関係者が私の耳元で「本当に、なんとか高くお願いしたいです…でも無理やろなぁ…」とボソッと言われた。胸にグサッとくる思いだった。

抜本的な改革案とは

 青果物の相場は、高く売りたい卸売会社と安く買いたい仲卸業者のせめぎあいで値段が決まる。安く買いたい仲卸…と書いたが、仲卸も産地には育ってほしいという思いが強いから、可能な限り高値で安く…という、一見矛盾した複雑な心境でせり等の取引に臨むのだ。だから、性善説的に言えば、卸も仲卸も高値で取引したいけれど、現実問題として製造原価のアップ分を吸収できるほどに値を上げられるわけではない。いっそ、全部を契約的に栽培し定量定額を買付けて、農家に保証すればいいのではないか、という議論も昔からある。が、よほど品質が良くて安定出荷ができる優良生産者ならともかく、ほとんどの農家でそれは無理なのだ。その年・その月の気象条件によって、品質はバラバラ、数量も大幅にぶれるのが農業の宿命だ。農政の根本的な改革として、最低価格保証ではなく直接保証に切り替える英断が下されればちょっと話は別かも。それ以外に私には解決策が見当たらない。とにかく、何か打開策を見出さないと日本の農業は廃れるがままであり、我が社・我が業界もますます苦しくなる。農業全体の構造から考えなければいけない。農業はやめてしまったら元にはもどらないのである。

千里浜なぎさドライブウェイを走る

数百メートルのドライブ

 久しぶりに千里浜なぎさドライブウェイを走った。全長8キロあるのだが、その時々の状態や復旧作業によって、通行制限がなされる。昨年リニューアルオープンした「千里浜レストハウス」がなぎさドライブウェイの終着点である。今日走れたのは、そこから千里浜インターチェンジまでのほんの数百メートルだった。

日本唯一の砂浜ドライブウェイ

 千里浜なぎさドライブウェイは、車で砂浜を走れる日本で唯一のドライブウェイである。その秘密は、砂のきめ細かさにあるのだという。一粒一粒が海水を含んで引き締まった状態を作っている。

千里浜再生プロジェクト

 しかし、波に侵食されて、1年間に約1メートルずつ海岸線が後退しているのだ。私の子供のころの記憶では、たしかにもっともっと幅が広かったように思う。このまま放っておくと確実に消滅してしまう運命だ。よって、地元では2011年から「千里浜再生プロジェクト」と題した保全計画がなされている。なんといっても日本で唯一の財産だ。県あげて、いや、国を挙げての維持をお願いしたい。

いつまでも

 ほんの数百メートルだったが、どんより曇った天気も羽咋の海らしく、気持ち良く走ることができた。10年後も20年後も同じように走れることを祈る。