ファーム菜四季アスパラ始まる

アスパラ3年目

 子会社「ファーム菜四季」は穴水の圃場でハウスを10棟構え、主にアスパラガスの栽培を手掛けている。アスパラガスは植えてから2年は出てこない。今年が3年目でようやく地面から春と夏にツクツクと伸びてくる。こうなれば今後10年程度は収穫ができる。

ファームで生産、農協で調整

 ファームでは収穫はするが、商品に仕立てるには①長さを揃える、②サイズ別に分ける、③100gに結束するの3行程を経なければならない。この調整作業は圃場のメンバーではできない。あまりに手間と時間がかかり、その他の作業で大忙しのメンバーでは手が回らないからだ。そこで、地元の農協の共撰に混ぜていただく。調整作業は農協によって行われ、、品物は共撰の一部として出荷されることになる。

1週間程度は自前で調整

 ところが、まだ農協の体制が整っていない。あと1週間程度かかるようだ。ファームのハウスからは太いのかなり出てきているから、農協の撰果がスタートするまではファームの個撰品として出すことになった。調整作業は自前でやらねばならない。自前すなわち私と私の大先輩・新保監査役がやるのである。新保監査役は営業時代は30年にわたってアスパラの販売担当であった。どうやって調整するかは知っている。かなり原始的な手作業となったが、この1週間だけの特別業務としてやらねばならぬ。

時間との勝負

 アスパラは出始めると物凄い勢いで成長する。適期を逃すと、穂先が広がってグレードが落ちる。まさに時間との勝負である。ここ数日、急激に気温が高まったせいで、初回の出荷はやや伸びすぎたモノが多かった。本当に農産物の生産・出荷は難しい。

ファームの日本柱

 とにかく、アスパラのシーズンが始まった。穴水農場の今年の目玉であり、今後は南瓜とアスパラが両輪にならねばならぬ。ど素人の私は生産面では何がしの力にもなれないが、何としてでもこの事業は軌道に乗せて行きたい。

義父のお祝いの会

石川県知事表彰

 3月24日のブログに書いたように、義父(妻の父)が石川県知事表彰を受け、また、米寿になられたこともあってそのお祝いの食事会を身内だけで行った。その席で改めて会社が果たしてきた社会的な役割、特に女工さんら従業員への待遇についての興味深い話を聞けた。

一つの街を作るに等しい

 繊維業界は斜陽だが、過去の業績は決して色あせるものではあるまい。会社は、最盛期には数百人の社員を抱えて工場を操業していた。女工として働くために全国から女性が集まってくる。数百人の女工を働かせ、養う。そのためには衣食住すべての環境を整えなければならない。完全にそれは一つの〝ワールド〟の形成だった。

女工たちの人間形成の場

 数百人の女工を働かせるというと、すぐピンと来るのはかの「女工哀史」である。そのイメージは過酷、薄給、非人道的と悪いものだが、義父の会社はまったく真逆だ。ただの工員として単純労働に従事するだけでは人生に実りはないだろうと、自前で学校を作り、読み・書きを学ばせ、料理、お茶といった女性としての嗜みまで教えたという。こうして女性たちは生活全般に必要な教養を身につけ、やがて卒業して生誕の地に戻っていった。まさに人材教育の場として機能していたのだ。

表彰に感謝

 話を聞くまでこうしたことは知らなかった。よくぞ人生の晩年に差し掛かったタイミングとはいえ、よくぞ義父およびその祖先たちが営々と築いてこられた功績を讃えてくださった。この日は身内からの本当に本当にささやかながらの慰労とお祝いの食事会となった。今までご苦労さまでした。

女性新規せり人デビュー

入社3年目でのせり人デビュー

 本日、当社から一人、新規せり人がデビューした。野菜第二部の志賀さんだ。キュートな女性営業社員である。先だつ4月1日には男子の神田くんもキュウリでせりデビューを果たした。双方、入社して丁度2年が経ち、3年目突入での船出だ。

金沢市場のルール

 昔の卸売市場は、販売=せりだったから、せり人になることが一人前になった証であったし、入社丸3年を経ないと資格を得られなかった。今ではせりより相対販売が圧倒的に多くなったので、せりは入社2年で可能に変更となり、「せり人試験」というペーパーテストも免除になった。つまり、以前より敷居が低くなったわけだ。

前向きな姿

 だが、初体験を前に緊張するのは今も昔も同じである。数日前、志賀さんのデビューが決まって、私は「今の心境はワクワク、ドキドキ、ビクビクのうちどれ?」と聞いたところ気丈にも「ワクワクとドキドキ両方です。ビクビクはないです」と応えた。神田くんも3月の時点で、「4月になったら僕やります」と自ら言ってくれた。若者の前向きな姿はまぶしい。

仲卸がやさしい!

 志賀さんが本番を迎えた。最初はさすがに緊張していたようだ。挙動に落ち着きはなく、何度も「あ、すいません、すいません」とお客に謝りながら進行していた。だが次第に慣れてきた。手がわからなかった時はちゃんと聞き返している。そして彼女の今までの真面目な仕事ぶりの賜物で、お客さん(仲卸業者)の手の出し方のやさしいことといったら。ゆっくり、わかりやすい指で値段を示してくれている。みな彼女を暖かく見守ってくれているのである。

当市場に名物になれ

 せりは何と言っても市場の華だ。その舞台をうら若い女性が飾ってくれるのはとてもイメージが良い。彼女にはもっと上手く、そしてもっとせりを好きになってもらって、名物的存在に育ってもらいたい。あんまりいい話題がなかった最近の市場に暖かい風が吹いた。がんばれ。

青果物の週間情報 【2022-W14】

■週の概況 第14週 4/4(月)~ 4/9(土)

【全体】

 新年度。まん防が明け、暖かい晴天が続き、桜が開花した。この週は行楽日和だろう。世の中の経済活動は完全回復にはほど遠いが、人々の心がリフレッシュし、動きが活発化することは確実だ。一般野菜では特に果菜類に引き合いが出てくる。サラダ商材を中心に順調に増量する見通しながらも、消費も活発化するため、胡瓜などいわゆる〝安もがき〟に入っている。今まで安かったものは底上げし、高かったものは反落するといった、品目によって上げ下げがまちまちとなる週になりそうである。
 時を同じくして、季節物がどんどん出てきた。春の食材は寒さで出遅れていたが、この週は一気に増量することが見込まれる。特に注目は筍で、県外産は盛りとなり、週の後半には地物(小松産)も出てくる予定だ。こごみを中心とする能登の山菜類、金沢市の胡瓜・太胡瓜も増量となる。この週は思い切り「春」と「地物」を前面に打ち出したい。

【野菜】

 葉茎洋菜類では、レタスは主要産地の増加により価格は下げに向かう。キャベツ・白菜は増量し前年並みの入荷が見込まれる。葱は安定した数量で前年より安い。菜類では、小松菜は増加が見込まれる。アスパラはメキシコ産が減少する。
 果菜類では、胡瓜は低温の影響から数量は落ち込み強含み予想の中、県内産JAの入荷がスタートする。茄子は前年より安値推移となる。トマトは小玉中心の入荷で数量は伸び切らない模様。ピーマンは順調な入荷から価格はもう一段下げに向かう。JA金沢市より太胡瓜が出てくる。
 根菜類では、大根は潤沢な入荷で単価は下がるが、前年より高値推移が続く。反対に、牛蒡は前年より安値である。甘藷は県内産を中心に前年を上回る数量が見込まれる。馬鈴薯は各産地で減少傾向で価格は上げに向かう。筍は各産地で増加が見込まれ、県内産地がスタートする予定だ。

【果実】

 国内果実では、苺は入荷のピークは落ち着いたが安定した数量は入荷できる。晩柑類ではデコポンは長崎産の作型が切り替わり、愛知産がスタートするが価格は前年と比較して高値となる見込み。メロン類では、熊本産の端境と茨城産の出遅れから全体量は少なく、引き続き高値が続く。季節商材では、長崎産の枇杷、沖縄産のパイナップルを入荷。
 国外果実では、バナナは船舶の遅延から不安定な入荷となり高値推移となる見込み。キウイフルーツは週前半にニュージーランド産のゴールド品種がスタートsるする。マンゴーはタイ産に加えメキシコ産の入荷が始まる。

おはようございますとすみません

今年も新入社員研修

 本日、新入社員3名を相手に研修の講師を務めた。昨年も同じ時期に同じ内容でやっている。市場流通の仕組み、会社の業務、社員としての心構え、の3部構成である。毎年4時間も受け持っていて、おいおいそろそろ半分くらい総務でやってよ、とお願いしたら、今回は総務部女子の工藤さんがやってくれることになった。工藤さんは営業も数年務めた経験があり、現場も管理も両方理解している優秀な社員である。私の受け持ちで、特に力説したかったのは「おはようございます」と「すみません」だった。

おはようございます

 あいさつの基本中の基本が「おはようございます」である。これをとにかく疲れるくらいに言い続けよ。目標は1日100人だ。社員であれお客さんであれ見ず知らずの人であれ、すれ違う人に言い続けよ。ガン無視されてもめげるな。1年言い続けて初めて相手が応えてくれたら、その時が勝利の時だ。だが、今私がアドバイスしても、社員は必ず二通りに分かれる。いつまでもフレッシュにあいさつを続けられる者とそうでない者。どうせなら前者になれ。誰も褒めてくれないからといって自分でシュリンクするな。見ている人は見ている。

すみません

 最近の若者は謝ることをしない。敗北したような気になるからだろうか。講義で伝えたいのは、謝るべきときはちゃんと謝りなさいということだ。私のように口癖が「すいません…」となってしまって、なんでもかんでも付けてしまうのは我ながらどうかと思う。だがミスした時に何も言えないのはもっと問題だ。私の母はかつて「私は商売人の娘だから、謝って済むなら頭ぐらいなんぼでも下げる」と言っていた。私の妻は「とにかくまずはスイマセンだよ!」と言った。両者とも謝っているくせに実は超強い。

若者に教える責務

 おはようございますは習慣に、すみませんは適切に、ちゃんと言える若者に育ってほしい。本日、実は「おはようございます」で研修の時間が来てしまい、今回「すみません」を講義することができなかった。何かの機会を設けて教えたい。

新年度目標

一社員として

 社員に行動計画を求めている。より具体的なものにしないさいと言っている。社員に課して自身がしないのでは筋が通らない。

1)利益を出す

 企業が存続する上で利益を出さねばならないのは当たり前だ。営業利益をしっかり確保すること。そのために昨期より粗利益率を■ポイント上げる。■ポイント上げるためには営業の仕掛けを■日早くし、売り込み回数を昨期の■倍に上げる。販売環境は改善しないものと覚悟し、自分の売り方を変えることに注力する。

2)社員に還元する

 社員の労務環境を昨期より改善する。一人で行うのでなく、部内■人で共有する体制を取らせる。半休を月に■度取らせると年間で■日の有給消化となる。これをベースにする。

3)S金の見直し

 S金の見直しをする。これはスケジューリングしないと進まない。近年のデータ分析を早めに成し遂げること。

4)雇用体制の見直し

 人員不足は当社も同じ。いや当初はより深刻な問題として正面から取り組む必要あり。制度をしっかり検討し直すこと。そして社員一人ひとりと向き合う。広く学生に会社を知ってもらい、中途採用も含め、■人以上■人までの新規採用者を内定する。

5)中期・長期経営計画の策定

 毎年作成、毎年チェック、毎年更新も経営層としては当たり前の活動。やるべきことを構築する。

子供の成長

二人の息子

 今、春休みで長男が帰省している。次男も大学受験が終わってのんびり過ごしている。我が家はジジババ、夫婦、息子二人の久しぶりの6人フル体制となった。するとちょくちょく感じるのである。いつの間にやら息子らはだいぶ成長したもんだと。体の大きさや知力ではなく、人格的にというか分別というか。ずっと親として、子にこうしてあげなきゃ、あれしなきゃとばかり考えてきたが、今では逆に助けられている。18年前のジジババ>夫婦>息子らという相関関係が今や息子ら>夫婦>ジジババとなった。

私より優れた点

 長男は私より心根が優しいし哲学的思考に長ける。次男は私より分析力が高く芸事のレベルも高い。ふたりともモノによっては私以上に正しく認識しより良い対応をする。それは私が教えたものではない。彼らの生きてきた中で、私以外の誰かに教えられ、あるいは自分自身で構築してきた価値観だ。いつの間にやら身につけた。本当に有り難いことだ。

自分にあった世界

 親だからといって子供の上に立つ気はもうあまりない。やってほしいことがあればいくらでも力は貸すが、基本的に自分の道は自分で決めてくれればよい。これからは息子らを独立した人格と認め、敬意をもって接していきたい。だがまだ本人たちは、どんな世界で生きていくのかまったく定まっていない。願わくば、自身にあった世界、それぞれが幸せと思える世界が見つかりますように。そう願うばかりである。

四丁目7-1

初歩的なミス?

 我が社の住所は「石川県金沢市西念4丁目7番1号」である。「4-7-1」と書いてもいいし、縦書き郵便なら「四丁目七番一号」だ。ところが、先日の取締役会の議事録が回って来たので見てみると、文書の最後に「西念四丁目7番1号」とある。総務部のアホめ、俺は見つけたぜ、漢字か数字に統一せんかい、と次長の気屋村くんにドヤ顔で指摘した。すると気屋村君「何言っとるんスか。ずっと前からこうですよ」ときた。うそ。なんで?

登記簿謄本が出所

 登記簿謄本は「四丁目7-1」となっているのだそうだ。だから会社で最も由緒正しき(?)役員会議事録は同じ書式を採用しているとのこと。バカな。ならば登記簿が間違っている。放置していては恥ずかしい。初歩的なミスだろう。即刻修正せよ。もしかして近年会社の業績が悪いのはその愚かなミスの祟りではないのか?と気屋村君に詰め寄った。すると気屋村君「何言っとるんスか。全国共通、会社の多くがそうですよ」ときた。うそ。なにそれ?

○丁目までが町の名前

 なぜ「丁目」の部分は漢字で「番」と「号」は数字なのか。調べてみた。成り立ちは古くからの「町」と「字(あざ)」で行政区分されてきた歴史に根付く。簡単に言うと住所は「○○町」と「×丁目」に分かれるのではなく、「○○町×丁目」自体を一つの町名とみなすのだそうだ。だから「×丁目」固有名詞の一部となり、横書きになっても基本的に漢字表記は変わらない。「六本木」「五反田」を「6本木」「5反田」と書かないのと理屈は同じとのことだ(これはこれで妙な解説だが…)。

プチ知識とはいえ

 だからといって「4丁目7番1号」と書くのが間違いというわけではない。別に登記簿に敬意を表する必要はないのだが、総務部はいつのころからか「四丁目…」と書くよう改めたという。そんな経緯があったとはまったく知らなかった。そんなに重要なこととは思わないが、世の中知らないことばかりだ。少し勉強になった。

個撰とせりの妙

和歌山の筍

 和歌山県産の筍が増えてきた。当市場で和歌山の筍は農協を通じてまとまった量を出していただいているが、個撰品としてせり販売をしている。一籠(かご)ごとに生産者の名前とサイズが示され、別々にせりにかけていく。同じ「秀の2L」でも、荷主(掘った人)によって値段が全然違う。和歌山の筍は半透明のビニール袋にくるまれているので外側から見ても判別しづらいが、競り人も買人もしっかりと品質を見定めている。これぞプロの目利きである。私は素人同然で、ここらの妙がわからない。

予言的中

 せり前、大先輩にあたる方が耳打ちしてくれた。「そこの○○さんの筍が、今日のせりで最高値をつける。いくらかになるかは流れによるが、せり落すのは●●さんだ」。そして結果はそのとおりになった。●●さんは近江町市場の八百屋さんだ。これと決めたいい品は周囲とは次元の違う値を出してゲットしていく。そして荷主○○さんは、昔から抜群にいい筍を出す有名な方だそうだ。いいものにいい値段をつける。これは信用につながるちゃんと見てくれているなと生産者も安心し、その市場に出荷を続けてくれるようになる。

品定めの妙

 農産物は規格化がとても発達したけれど、筍や松茸のように、山から採ってくるような類は、品質のばらつきが激しいためにどうしても「せり」のような機能が必要になる。今やせりは全体取引の1割にも満たないが、将来も完全になくなることはないだろう。そして、やはり卸売市場の面白みというのもこの目利き・品定めにあるのである。

猿とオレンジ

市役所からの電話

 金沢市の農林水産局の小川さんから電話をいただいた。「市場に廃棄するものはありませんか。できればカボチャか芋のようなもちが良くて甘みのあるものがいいのですが」。何にするのか聞いたところ、なんと猿を捕獲するためという。小川さんによると、この1~2年が勝負所なんだそうだ。そんなに長期に渡る戦いなのか!驚いた。

猿捕獲のための罠

 金沢市内で、猿の被害が結構あるらしい。そんなことは知らなかった。その猿を捕獲するために罠を仕掛ける。餌で釣って檻に入れるのだ。猿をおびき寄せる食材を求めてきたわけである。もちろん猿が好みそうな農産物が良い。市では捕獲用として購入してきたが、卸売市場に協力を求めればもしかして無料で調達できるかもと思ったらしい。

市場の廃棄は実は少ない

 市場には廃棄食材がたくさんあるイメージがあるのだろうか。実は野菜についてはほとんどロスはない。市場は即売が基本。出荷者から鮮度が高いものが届くのが原則なので、捨てる野菜はないのが現実だ。なので協力したいのはやまやまながら、カボチャと芋類に定量定時で提供はできないと答えた。だが、と続ける。輸入柑橘なら出せるので、お試しにどうかと提案した。そして、米国産オレンジのB品を2ケース分提供した。

輸入柑橘の出番

 輸入フルーツは数週間かけて日本の港に到着し、さらに浜の冷蔵庫で保管されながら市場にやってくる。その長期間に何割かはやはり劣化する。腐りを発生すれば廃棄しかないが、その一歩手前ならば十分に生食として通用する。本当は安値ながらお金に替えられるところ、市の活動のために提供することにした。さて、猿はオレンジに手を伸ばすか。腐る手前の果実は香がかえってかぐわしい。結果が楽しみである。