藤原正彦さんの講演を拝聴する機会がありましたので記録します。
北國新聞政経懇話会12月例会
藤原正彦氏
(作家、数学者、お茶の水大学名誉教授)
演題「日本の底力」
場所:金城楼
日本には底力がある。
自然科学で24のノーベル賞を取っている。これは世界的にみて米国と並び圧倒的だ。民族的な優位性があるわけではない。
国柄が育んだ一種異常な帰結と言えよう。一番貧しい武士が支配階級であった。
高い道徳と倫理。礼節の高さ。痩せ我慢文化。聡明と好奇心の強さがすごい(ザビエル談)。
絶対的権力たる幕府と絶対的権威たる天皇。どちらかに集中せずに並び立たせたところが叡智である。
その文化を守る上で鎖国は素晴らしい制度だった。中でも徳川綱吉は世界最高の指導者であった。
幕末明治に来た外国人は、ケンペルの本をみんな読んで日本にやってきた。そこには日本の驚くべき叡智の高さが記されていた。だから、来訪者たちは日本を植民地にしようとは思わなかったのである。
文化レベルが高いことは防衛力になる。
しかしそれは残念ながら過去の話である。
現在は読解力が世界15位。と凋落した。ただし本を読んでいる日本人は世界トップの知的レベルを保っている。
公平、自由、平等はこの世に存在しない。あれは欧米が作ったフィクションである。グローバルスタンダードはまやかしの思想である。
日本は英語においては無能な民族なのだ。いくらやってもできるようにならない。これを自ら認めて、教育の正しい方向性を修正すべきだ。英語など勉強せず、日本語、日本文学、日本の伝統思想を学べばおのずと国際人は育つ。
経済発展に英語は関係ない。英語でうまく話すよりも話す内容が大事なのである。それを支えるのは教養だ。
もっと読書すること。新聞を読むこと。
お金よりも大事なものがあることを教えることが教育である。
情緒と形、美的感受性、美醜の感覚が大切なのである。
汚いことをするな、という道徳観が大切なのである。
日本人はなんでも芸術にしないと気が済まない国民である。文学の数は世界中で圧倒している。
これは知能指数の高い低いではない。美的感受性の差なのである。
国は、百姓だけは守らなければならない。
百姓は美しい田園を守る番人である。
桜は4、5日で散る。儚いが故に美しい。
虫の音を美しい音楽のように聞く。
そこに人生を投影する感受性を庶民が皆持っている。
「地味」であることの素晴らしいさ。正義、勇気、慈愛、惻隠、武士道。これらの価値観を取り戻すべきである。
惻隠・・・弱者を憐れみ助ける。これがキーワードである。
卑怯を憎む心を取り戻せ。今の日本政府も卑怯者に成り下がった。
子供を躾けるのに理由なんかいらない。ダメなものはダメだ。はっ倒せばよろしい。
しかし今の日本も捨てたもんではない。
それは震災の時に発揮された。惻隠はまだ生きている。
論理・合理・理性は大事。
それに日本独特の情緒を付加するのが人類への貢献の道だ。